アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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2013.02

おもてなしの精神で広がるまち

前編 芸術家とのつながりがもたらすもの 徳島・神山
5)アーティスト・イン・レジデンスは17世紀生まれ

さて、神山のアーティスト・イン・レジデンス(以下AIR)について詳しく紹介をする前に、AIRということばについて触れておきたい。
AIRとは、簡単に言うとアーティストやクリエイター、研究者、演出家などを支援する滞在型創作活動のこと。異なる文化や環境のなかで暮らし、現地の人々との交流を通じて、新しい発想やアイデアを得て、新たな作品制作を行う活動である。つまり、作家に創作環境を提供するものがAIRの基本的なプログラムだ。
近年、展示空間を制限されることなく制作されるサイトスペシフィックな(場所に固有な)作品やより社会的な関係性をテーマにした作品が増え、作品の形態もさまざまに多種多様なものが増えてくるなかで、そうした創作活動を支える仕組みとして、海外では作家の活動を支援するかたちで、レジデンス施設やシステムが発生してきた。しかし、日本では、そのモデルを参考にした地方自治体による施設づくり、いわゆるハコものづくりが先行して、形成されてきた面もある。
そもそもAIRは、17世紀、フランス政府が優秀な芸術家をローマに留学させるために現地に設けた滞在施設、ヴィラ・メディシスがその原型となっている。当時、世界一の芸術の都だったローマで最先端のアートに接し、技術や知識を研き、ヨーロッパ中から集まった知識人や貴族達との人脈を築くためのものとして機能していた。ちなみにフランス政府による施設は、現在、世界の主要都市に設けられ、毎年作家が派遣されている。日本では京都で現在も続くヴィラ九条山がそのひとつで92年に設立された。ちなみに、日本で最初のAIRは、87年、オーストラリア政府がオーストラリアカウンシルを通して、自国のアーティストを東京に滞在させた取り組みだった。