3)地元スタッフの余力を残す
小島さんには明確なビジョンがあるが、自分を前に出すような店にはしていない。任せられることは人に任せるというやり方だ。
———僕は製菓学校で修行したわけでもなければ、レストランで働いてたわけでもないので、自分が食べたいものしかつくれない。補助に入ってくれてきた丁寧な子の方が僕より全然うまくなったりするんですよ。「もう僕より上手いから、どうぞ」と(笑)。できることは任せたほうがいいと思って、コーヒーの焙煎も信頼している京都の店にずっとお願いしているし。誰が仕切ってるのかわからないようなお店のほうがいい、と思っているんですよね。
もちろん、小島さんがコーヒーを淹れていたりもするけれど、それを売りにするわけでもない。てきぱきとしたスタッフが静かに行き交う「働く景色」もまた、目に心地良い。
スタッフに関しては、地元の、それも主婦の人たちが多いという。
———子育てしているスタッフが半分以上いるから、帰ってから、うちでヘトヘトにならないでほしい(笑)。必ず2割から3割の余力を残して帰る仕事でいい、と思っていて。手は抜かないでほしいけど、家に帰って子どもにご飯つくる元気が残ってないとなったら、次の日、店に来るのがいやになるじゃないですか。生活のなかで、ここで働く時間は100%力を注ぐ時間じゃない。そういう割り振りをちゃんとしてほしい、とは言っています。
彼女たちに長く続けてもらうために、店の開け方を変えることを小島さんは選択した。
———主婦の方に何時から何時まで、何曜日から何曜日まで開けるから、これに合わせてみんな働いて、って無理なんです。そうなったら続けられない人は辞めなきゃいけないし、能力ある人にとっても、来てもらいたい僕にとっても悲しいことで。
だから、みんなといつ働ける? みたいな。そこまで柔軟ではないですけど、この日はみんな参観日重なってるね、休もうか、というくらいの方が楽だし、こういう土地柄ではすごくいい。お店が伸縮自在のほうがやりやすいんですよ。そこに行き着いたというか。
だからみんな、けっこう長く勤めていますね。「三方よし」っていうじゃないですか。本当は4つ必要なんですよ。4つめは「スタッフ」。それがあってもいい時代なんじゃないかと思います。
お客さんの都合ではなく、店の都合で開ける日時を設定する。地元スタッフの生活を大事にしながら、彼女たちの限られた時間で、できることをするという方向だ。お客やスタッフをはじめ、かかわる人たちとの信頼関係があってのことだと思うが、考えてみれば、その設定もまた、当たりまえであるかもしれない。誰もが気持ちよくいられる環境は、その場の空気にじわじわと作用するはずだから。

山陰地方の素材をベースにつくられる焼き菓子は、オープン当時から人気。スコーンやレモンケーキなどの定番商品にくわえ、季節ごとにつくられる商品を目的に足繁く通うファンも多い


