2)当たりまえのことを、当たりまえにやる
小島さんは数多くのカフェに足を運び、メニューや接客などをじっくり観察し、レポート的に記録してきた。16歳で心斎橋のカフェに足を踏み入れてからというから、かなり年季が入っている。大阪や京都をはじめ、その数はじきに200軒以上にのぼったという。その頃には、続く店とつぶれる店の傾向がわかるようにもなっていた。
カフェ巡りの一方で、空間内装の仕事にかかわるうちに運営側にも興味を持つようになり、働き始めたカフェでいきなり店長になるなど、さまざまな経験を積んだ。そのなかで、どういう店が好ましいか、自分がやるとしたらどうしたいかを始める前にはっきりとつかんでいた。
———特別な仕掛けがないお店の方が好きで。「誰々がデザインした」「時代の最先端を行っている」とかには全然興味がなくて。ただお店がきれいで、スタッフがちゃんとしている、そういうことを毎日やっているお店が素敵だと思うんです。「当たりまえのことを当たりまえにやる」ことを積み重ねているお店って、いつかお客さんはひとりでに感動するので。
人を「あっ」と言わせるお店って、なかなか続かないということが多いんですよ。もちろん、それをずっと言わせ続けられる特別な人っていうのは世の中にはいるんですけど、僕はそっちじゃなくて、時代のちょっと外側にいるお店というか。
時代に左右されることなく、当たりまえを積み重ねる。言うのはかんたんだけれど、日々実行していくには、どれだけ目に見えない努力や工夫が要ることか。それを10年やってきた店の強みを感じる。
また、小島さんには「飲食店」としてちゃんとしていたい、という気持ちもある。
———例えばパートナーのご両親と待ち合わせするお店として使ってほしいと思うんです。そういう人を連れてこられるお店。でも、ホテルじゃない。その前段階で待ち合わせできるお店って、飲食店としてちゃんとしてるなと思うんですよね。
「ちゃんとしてる」ってちょっと曖昧な言葉ではあるんですけど、例えばスタッフは白いシャツを着ているんですが、「いいシャツ着なくていい。その代わり、ちゃんとアイロンをかけてきてね」って言うんです。しわしわのシャツを着ていて「これ、ブランドなんですよ」と言われても、本末転倒だと思ってしまう。 同じように「革靴を履いてくるなら、ちゃんと磨いてきてね」とも言います。
本質を見失わないような振る舞いをしてほしいというか。自分たちがやりたいことを49%にして、お客さんの望んでいることを上回らないでほしい、っていうのがあって。例えば、店に素敵な何かを置きたいとスタッフが思ったとして、それにひっかかって割れるような可能性があるとしたら、置かないでほしい、となるんです。自分の思いより、お客さんの安全な方をとってほしい。 そういうところを見失わないようにするしかないかもしれないですね。それをやっていれば、自信が持てるので。

客層は幅広い。どんな人でもリラックスできるような、やわらかい空気がながれる


