アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

手のひらのデザイン 身近なモノのかたち、つくりかた、使いかたを考える。

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#161

日本庭園における「石」
― 烏賀陽百合

(2026.05.05公開)

庭の中にある素敵な石灯籠や景石を見ると、思わず嬉しくなる。これらを選んだ施主や庭師れを作った石工て庭の中でひっそりと佇み続けてきた長い年月に想いを馳せてう。物が好きで庭園デザインの道に入ったがいつの間にか庭に据えられた自然石や石灯籠に心を奪われるよになった

※画像の庭園について、どのようなものか簡単な詳細をいただけますでしょうか?

筆者が改修を手がけた京都の寺院庭園。江戸時代の灯籠を活かし、景石と飛石を据えて新たな景を創出

なぜ石はれほど魅力的なのかそれは長い時間を経てもなお変わらずその場所に在るからだ植物はやがて枯れ姿を消う。「〇〇お手植え」と伝えられていても実際に植え替えられていることが多く、当時のものが残っていることは少ない。し石は長い年月経てもほんど変わることく、その場に存在続ける
平等院鳳凰堂の前に据えられた平等院灯籠阿弥陀如来像を照らす灯明とし仏前に基のみ置かれている。この灯籠は平安時代には金銅製だったとされる現在の姿は各部位に制作年代が異なる基礎は平安時代竿は鎌倉時代宝珠火袋の板石は室町時代のものだ金銅から石へ変わり、その後も時代ごに補修れながら受け継がれてきた。基礎の石が平安時代のものうことも驚きだが各時代の石工たちがれらを補修し、灯籠を守ってことが素晴ら人々の想い長い時間の積み重ねにロマンを感ずにはいられない

筆者がニューヨークのグランドセントラル駅のイベントで作庭した日本庭園。〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇(※この作庭において、特に景石の扱いで意識されたことをお書きいただけますでしょうか?)

筆者がニューヨークのグランドセントラル駅のイベントで作庭した日本庭園。ニューヨークでは自然石の入手が難しく、17世紀の石切場に残されていた石を用いて作庭

日本庭園において石は極めて重要な要素である自然石を用いそれらを組み配置するで空間を構成するには庭師の力量美意識が如実に現れる石組みに優れた庭は、やはり例えば南禅寺塔頭の金地院では鶴島や亀島の石組いわぐみが豪快であ細部はきわめて繊細に構成れている作庭は大名で作事奉行も務めた小堀遠州による。し彼自身は現地に赴いていない遠州の意図を汲み取り、現場で石を組んだのは「賢庭 (けんてい)」と呼ばれる庭師である彼の手によって金地院の石組は高い完成度を有ている
また豊臣秀吉が地割大体のデザインを行った伝わる醍醐寺三宝院の庭園も賢庭によるとされる大きな石が沢山使われた絢爛豪華な桃山様式の庭園で賢庭はここでも膨大数の石を巧みに組み上げ護岸や滝石組たきいわぐみを美しく仕上げている賢庭は当時すに石使いの名手として知られその名も後陽成天皇から賜ったそれほどまでに石組の庭園を作れる庭師が重要とされた時代であった
小泉八雲は、日本庭園と石について次のように述べている。
日本の庭園の美を理解するには石の美しさを知る必要があるいっても人工的なものはなく、自然の営みによって生まれた石である石にはそれぞれ個性があり、色調や明暗が異それを感取れなければ日本庭園の真髄には迫れないだろう。
明治時代にすでに日本庭園における自然石の美の本質をここまで言い当てている点に、小泉八雲の審美眼の確かかがえる石の美しさに気付き、「それを感取れなければ真髄に迫れない」とまで言い切っている
私もまた日本庭園の美は石にそ宿るている日本は石に恵まれた国であり、各地に固有の美を備えた石が存在する京都の鞍馬石や貴船石真黒石和歌山徳島愛媛で産出される青石神戸の御影石鳥取の佐治石などそれぞれの地域の石が庭園の景観美を支えてきた世界を見渡ても自然石をれほどまでに庭園へ取入れている国は他にないだろ

画像の灯籠について、簡単な詳細をいただけますでしょうか?

古田織部が好んだと伝えられる「織部型灯籠」。茶人であった織部にちなみ、茶人たちに愛され、茶庭に多く用いられる

また光を灯すための石灯籠には多様な種類があり、意匠に富んでいる点も日本独自の特徴ある灯籠は仏教とともに中国から伝来し、その後日本において多彩な形式へ発展庭には古田織部にちなんだ小ぶで上品な織部灯籠茶道具が彫られた「善導寺型灯などが好まれたまた徳川家への寄進を目的とし寛永寺型灯籠春日大社に奉納れたことから三笠山や鹿が彫られた春日灯籠など用途や目的庭の雰囲気に応灯籠がデザインれてきた
先人たちが好んだ意匠を知ることその時代の流行や文化的背景を読み取ることができるのよな石が選ばれどのよなデザインが好まれたのかを知ること日本人の感性の豊かが見えて石や灯籠の魅力に気づいた日本庭園の美しさらに深く、豊かなもの庭を歩くと石に目を向けてみると、これまでは違った景色が見えてるだろ


烏賀陽百合 (うがや・ゆり)

庭園デザイナー、日本庭園本著者。
同志社大学文学部日本文化史卒業。兵庫県立淡路景観園芸学校、園芸本課程卒業。カナダ・ナイアガラ園芸学校で園芸、デザインを3年間勉強。またイギリスの王立キューガーデンでインターンを経験。
ニューヨークのグランドセントラル駅のイベントで日本庭園を作庭。寺社や国内外の個人邸の庭園を手掛ける。庭園に関する講座や講演、ツアーも行う。また日本庭園に関する書籍を10冊出版。
『美しい苔の庭』(エクスナレッジ)
『京都、美しい苔庭さんぽ』(講談社)
『京都の庭とお菓子さんぽ』(エクスナレッジ)など。

Instagram: @yuriugaya