木彫刻のまち井波で、建築家の山川智嗣さんたちが取り組む、木彫刻などの伝統工芸と宿泊施設をつないだ「Bed and Craft」。前号では、Bed and Craftの大きな特徴のひとつとなっている「一棟一職人」の各宿がどのようにつくられていったのか、6棟のうち、4棟を訪ねながら、4人の作家の話を紹介した。
そのひとつ「KIN-NAKA」で、まちの歴史や産業の成り立ちを表現し、「井波ならでは」の宿をつくりだしていたのが、木彫刻家の前川大地さんだ。前川さんは、地元の井波彫刻協同組合の理事としての顔も持ち、後継者育成や、欄間に代わる新製品の開発に取り組んでいる。
井波木彫刻は、精緻で瀟洒な装飾彫刻として継承されてきた。だが、装飾に特化してきたために、現代のライフスタイルでは需要が少なく、現代に生かし、産業として持続できるしくみをどのようにつくっていくかは大きな課題となっている。連載の最後となる今号では、前川さんの伝統を生かした新たな製品づくりの取り組みを入り口としながら、Bed and Craftの取り組みが、このまちや伝統産業とどのようにかかわり、どんな展望に向かって進もうとしているのかを紹介したい。