台南のまちは、ミルクレープに似ている。幾層にも重ねられた土地の履歴というクレープ生地のあいだには、地層のように濃厚なクリームと、南国フルーツのスライスが顔をのぞかせて輝く。だから、台南のまちを歩きまわっていると、おいしいお菓子を口にしているような、充実した幸福感につつまれる。
そのおいしさは、台南の人々の伝統を大切にした昔ながらの暮らしぶり、そして地域・行政・アーティストがゆるやかにアートで結びつきながら、まちの文化や歴史を見直し、また発見していく新しい息吹に支えられている。
台南特集の3回目であり最終回にあたるこの号では、現代美術とまちをつなげる台南のキーパーソン、杜昭賢(トゥ・ジェイミー、以下ジェイミー)さんのこれまでの道のり、そしてジェイミーさんが運営を手掛ける地域芸術祭「2019漁光島芸術祭」をレポートしつつ、まもなく開府400年を迎えようとする台南における、アートと地域のこれからについて考える。
風を知るひと