アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#110
2022.07

道後温泉アートプロジェクト 10年の取り組み

3 地域×アートの課題と実践を探る

3000年の歴史があるという日本の名湯、道後温泉。今回は、一大観光地である道後温泉地区を舞台に繰り広げられるアートプロジェクトの10年に渡る変遷を、3回にわたって取り上げる最終回となる。
これまで2回の記事を振り返ってみる。観光の目玉である道後温泉本館の長期保存修理工事というまちの危機感を背景に、地域の活性化対策として2014年に始まったアートプロジェクトは、「道後オンセナート」という4年に一度の大祭をはさんで、かたちを変えながら続いている。はじめは賑わいをもたらすツールとしての色合いの濃かったアートが、2019年から2020年にかけての地域を巻き込んだ参加型プロジェクトの体験によって、アートプロジェクトを我が事として捉える変化がまちのなかに生まれた。そして2021年には50名のクリエーターの短期滞在プログラム「クリエイティブステイ」を通して多くの交流が生まれ、そのつながりは、現在開催中の道後オンセナート2022にも生きている。歴史あるまちに生まれたアートプロジェクトは、その都度新しいレイヤーを築きながら、まちとアートの関係にさまざまな可能性を提示して今に至っている。
最終回は、これまで追ってきた道後温泉でのアートの取り組みにかかわる地元の若手の視線を中心にふりかえり、これからの道後のアートプロジェクトのゆくえを見通してみる。

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道後温泉本館は誕生以来、道後の中心であり要である。2014年以来のアートプロジェクトにおいても、本館の存在は外せない。上から、隅川雄二《令和乃道後温泉鳥瞰絵図》。本館の保存工事後の完成予想図。1階から3階までそれぞれ描いたものが立体的に重なる / 大竹伸朗《熱景 / NETSU-KEI》の模型と実際の部分。細部に至るまで、緻密に覆ってある。地元松山の制作チームによる圧巻の仕事