アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

TOP >>  特集
このページをシェア Twitter facebook
#76
2019.09

まちを耕すアート 台湾・台南

3 記憶の断片を縫い合わせる
3)まちから漁光島へ アートでける橋
漁光島芸術祭1

ちょうど取材の時期に、台南の安平漁港に隣接する漁光島で戸外芸術祭が行われていた。キュレーターはジェイミーさん率いるUrbanART Studioということで、ジェイミーさんの話を聞いた翌日、そこを訪れた。まちの中心からタクシーで20分ほど走り、大きな橋を渡ればそこが漁光島だ。古い名前を「三鯤」といい、清の時代から地図上に登場する漁民の島で、4ほどの土地の半分以上が森に覆われ、海辺には白い砂浜がひろがる。自然美に恵まれた、静かな島である。

漁光島に橋が架けられたのは、2009年のことだった。この「漁光島大橋」は、台湾全島のなかで初めて島と本土をつないだ。それ以来、美しい浜辺や夕景を楽しむことのできる撮影場所として漁光島は人気を集めるようになった。
島とまちとに今度はアートの橋を架けようと、漁光島芸術祭が始まったのは2017年。台湾からの観光客にも非常に人気のある、日本の直島なども視察・参考にした。2018年には、環境教育とコミュニティを結ぶことを目的として、オランダ・オーストラリア・ポーランドなどから7名のアーティストを招き、大型彫刻制作やワークショップ、住民や学生とのコラボレーションや、島の民家や公共スペースを使ったペンキアートなどの展示や設置をすすめ、さらに新たな作品を加えて今年2019年の3月30日から4月21日の約3週間にわたって、2度目の漁光島芸術祭が開催された。

今年の芸術祭のテーマは、「海と島の楽園」。
華語で「楽園」とは、英語でいうパラダイスという意味のほかに、「遊園地」「テーマパーク」という意味も持っている。この漁光島にかつてあったというテーマパークの記憶を元に、「子ども時代の記憶」「自然地形」「パラダイスの夢想」から島の過去と未来について語る10の作品が、台湾人アーティストや、住民・現地の小学生らたちとデザイナーらのコラボレーションによって制作された。

芸術祭中は、各作品の解説をしながら芸術祭をめぐるガイドツアーのほか、バンド演奏によるミュージックフェスティバルやダンスパフォーマンス、手づくり市、凧づくりなどのワークショップと、芸術祭のコンセプトから多彩な広がりをもったイベントも週末ごとに行われ、多くのひとがあつまった。
わたしたちが訪れたのは平日の夕方だったが、混雑というほどでもないが、閑散としているわけでもない。
潮風に吹かれながら、みんなが思い思いに、砂浜でゆったりと作品に近づいたり離れたり、作品に座って語り合ったり写真を撮って笑いあったりしながら、アートと気持ちのいい時間を交換しているようすが印象ぶかい。

P1000658

P1000656

P1000679

漁光島芸術祭のメイン会場となった浜辺 / 島の伝統的な産業である牡蠣養殖に使われた廃材を再利用した作品 / 国立台南芸術大学の建築藝術研究所による《鯤》/ あちこちに寝転がっている犬たちも、作品の一部のよう

漁光島芸術祭のメイン会場となった浜辺 / 島の伝統的な産業である牡蠣養殖に使われた廃材を再利用した作品 / 国立台南芸術大学の建築芸術研究所による《鯤》/ あちこちに寝転がっている犬たちも、作品の一部のよう