6)土地の土で茶碗を焼き、人とつながる
フランシスとゆふこ3
なんでも自分たちでつくる二人は、作陶のための土づくりにもチャレンジしている。奈良市月ヶ瀬の原土を砕くところから始め、小枝や落ち葉などを手作業で取り除くという。
ゆふこ : 硬い土なのでクラッシュするのが大変で、最初の頃は手が血だらけになったこともありました。陶芸されている方に聞いたり、自分たちでリサーチしたり、試行錯誤しています。
フランシス : この原土は、焼成温度と時間によって色が赤から黒、そして青へと変化するんです。何度も焼成して、ほとんどが失敗作で、3個くらいしか成功しないこともあります。
ゆふこ : 2、3個成功できれば素敵。この建物と同じでね、「とにかくやってみよう」っていう。そういうことができるからありがたいですし、楽しいよね。
最短距離を進もうと急ぐのではなく、たとえ回り道でも、自らの手で試すことこそを尊ぶ。彼らは、東吉野村での手ごたえを、一つひとつ味わっているように見える。
茶の湯に親しんできたゆふこさんは、フランシスさんの作品をこう評している。
ゆふこ : 安土桃山時代の頃は、茶碗づくりは型にとらわれずに自由に試行錯誤されていたと思うんです。
フランシスもお茶碗というものに惹かれて、「これは何がいいんだろう、どうしてだろう」と自分の中の美意識と対話をしてつくっているから、きっとそれがおもしろいんだと思います。


また、彼らは陶器という作品のみならず、五感を使う空間も人々に提供している。Okuyama Houseでは、春と秋にお茶席を開催しているのだ。村内はもちろん、大阪などからも人が訪れている。
お茶席を主に担当しているのは、フランシスさん。ゆふこさんは「彼はやっぱり自分でやりたいんです。自分で学びたい人。教えさせてもらえない(笑)。フランシスさんのお茶席は、サービス精神があるから楽しそうですよ」と微笑む。
フランシス : 私は笑顔でお茶を淹れています。それは、茶道はときどき堅苦しいと思ったからかもしれません。ただ心で楽しんでもらいたいんです。


この日のお茶は、地元で茶を栽培してつくっている服部さんの茶葉で。優しい味わいだった
紹介した2組に共通しているのは、もともとあった建物を生かして自ら改修して暮らしている点や、村の自然や文化に敬意をはらい、村の人たちとの交流も楽しんでいる点だ。
フィリックスさんとエミリーさんは地域産業の活性化や文化を伝える活動を、フランシスさんとゆふこさんは改修やお茶の活動を通して、日本や東吉野村の知恵や技術が受け継がれたり、広がったりしている。
次号では、同じく海外から東吉野村に移住した、アーティストと日本の歴史文化の研究者を取り上げる。
HA PARTNERS https://felixconran.com
Emily Smith @down2forage
編集者、ライター。埼玉県出身。編集プロダクション勤務を経て、2003年よりフリーランス。さまざまな女性誌を経て、東日本大震災を機に「ローカル・ソーシャル」を専門分野にし、雑誌『ソトコト』などで全国各地の取材を始める。2017年、東京から奈良へ移住。現在は、書籍制作、ローカルメディアの編集・ライティングのほか、地域のブランドにおけることばのブランディング、オンラインの編集・ライティング講座といった活動もしている。noteでは「加齢」をテーマに執筆中。https://note.com/kokuboyoshino
山形県出身、京都市在住。写真家、二児の母。夫と一緒に運営するNeki inc.のフォトグラファーとしても写真
を撮りながら、展覧会を行ったりさまざまなプロジェクトに参加している。体の内側に潜在している個人的で
密やかなものと、体の外側に表出している事柄との関わりを写真を通して観察し、記録するのが得意。 著書に
『ヨウルのラップ』(リトルモア 2011年)
http://www.naritamai.info/
https://www.neki.co.jp/
文筆家、編集者。東京にて出版社勤務の後、ロンドン滞在を経て2000年から京都在住。書籍や雑誌の執筆・
編集を中心に、アトリエ「月ノ座」を主宰し、言葉や本に関するワークショップや展示、イベントなどを行
う。編著に『辻村史朗』(imura art+books)『標本の本–京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎)限定
部数のアートブック『book ladder』など、著書に『京都でみつける骨董小もの』(河出書房新社)『京都の市
で遊ぶ』『いつもふたりで』(ともに平凡社)など、共著書に『住み直す』(文藝春秋)『京都を包む紙』(アノ
ニマ・スタジオ)など多数。青幻舎のサイトにて『女性と工芸 1900-1945』連載中。滋賀県陶芸の森評議員。
2012年から2020年まで京都造形芸術大学専任教員。
https://note.com/seigensha/m/m03df2469f0f4


