私が子どものころ、近所には必ず「面倒見がいい家」がありました。家に遊びに行くと、「夕飯まで食べていかんね」と声をかけてくれたり、子ども同士で喧嘩をしていると近所のおじさんが仲裁に入ったり、いい意味でも悪い意味でもおせっかいな人が周りにたくさんいました。しかし近年、地縁的なつながりは、都市化や核家族化の進行など様々な要因により、希薄化傾向にあります。
そんな中、私が住む久留米市で、「叶え合う支援」という新たな地域共生社会に向けた活動が始まりました。
「叶え合う支援」とは、「誰かの願いを叶える」という視点をもつことで、高齢・障害・子ども・生活困窮という分野の公的制度による支援だけでなく、地域住民同士の支え合いという関わりが生まれるという考え方。それによって、従来の制度だけでは解決が難しい課題に対し、支援できることの幅を広げていく取組みです。

久留米AU-formal(アウフォーマル)実行委員会代表・中村路子さん

「振袖を着て成人式に出席したい」という女の子の願いを叶えるために、振袖を持っている人や着付けが出来る人が集まった
「叶え合う支援」という理念を提案し、現在は「叶え合う支援」の実装に向けた活動を行う久留米AU-formal(アウフォーマル)実行委員会の代表・中村路子さんは、こう話します。
「公的制度による支援は、『抱えている課題を解決する』という視点から着手することが基本です。ただ、『困っている人を助ける』という入り口は、一般的に『大変そう』という印象を持たれがちです。その上、『専門的な知識が必要』『手をさしのべたら、逆に迷惑をかけてしまうかもしれない』など、自分から関わることを躊躇するケースもあります。
しかし『願いを叶える』という入り口は、本人の主体性も生まれ、『誰かの願いの実現を応援する』ことで、誰でも気軽に参加できる。私は、誰かの願いを叶えるために、たくさんの人が関わり合うような社会にしていきたいと思っています」

「病気がちの母親に誕生日ケーキを贈りたい」という女の子の願いを叶えるために、地場企業の社員が講師となり、社内のキッチンスタジオで料理教室を開催
昔の地域コミュニティは、田植えなどの労働や祭礼など、一家族の力では出来ない困りごとを住民同士の自発的な助け合いで支え、道の補修や清掃などの公共空間の維持も地域の共同作業で行っていました。しかし、それは同時に「強制力」や「同調圧力」を生み出す側面もあります。急速に変化する社会において、課題や価値観が多様化する昨今、昔の地域コミュニティが持っていた「緩やかな助け合い」を現代風に再構築する挑戦は、まだ始まったばかりです。
取材協力
久留米AU-formal実行委員会代表・中村路子さん
久留米AU-formalプロジェクト
https://kanaeau.com/
Instagram: @kurume.auformal
(月田尚子)


