1)まちの小さな映画館
ジグシアターは、25席ほどの小さな劇場だ。丘の上、見晴らしの良い建物(さくら工芸品工房)の3階にある。小学校だったという施設の階段をあがるにつれ、窓から見える景色も移り変わる。
訪れたのは、早春の午後。受付と待合にあたる場所はカーテン越しの光がやわらかく、気持ちのよい空間だった。正面が受付で、真ん中に長方形の椅子が置かれ、左右の壁面には本やカセット、CDなどが並んでいる。かなりのボリュームだが、程よい密度で、空間になじんでいる。映画に関するものが多いが、それに限らず、ジャンルは幅広い。さりげなく置かれた小物なども効いていて、センスを感じるけれど、人を緊張させない、おだやかな空気が流れる。いわゆる映画館というイメージとはちょっと違う。


劇場スペースに足を踏み入れると、そちらもまた、ゆったりとした、リラックスできそうな空間が広がっていた。布で覆われた座席は、木製のパレットを組み、クッション材を重ね、布をかけたもの。好きな体勢で観られるような仕様で、背もたれがある席、数人掛けできる席などヴァラエティがあって、観客はどこで観るかを自由に選べる(ただし、入場順)。映画を1本観ることは叶わなかったけれど、サンプル映像を上映していただいた。シネコンで観ていた作品だったが、音の響きがとてもよく、スクリーンに没入していける感じがした。

このジグシアターを開いたのは、柴田修兵さんと三宅優子さんだ。2021年7月にオープンした映画館は、個人経営というだけでも珍しいのに、上映スタイルも個性的だ。上映は月1企画、期間は10日前後。オープンしてから、ずっとそのペースを保っている。セレクトする作品は新旧さまざまで幅広いが、すべて、自分たちの企画である。
柴田さんと三宅さんは、ともに鳥取県の出身ではなく、鳥取に住んだ経験もない。また、映画館の運営にかかわる仕事をしていたわけでもない。湯梨浜町に知人がいて、何度か訪れる機会があったとはいえ、新しく住む場所で、新しいことを始めたのだ。



