朝6時半の開店にそなえ、「LAB KITCHEN (ラボキッチン)」店主の桃井日向(ももい・ひなこ)さんは5時頃からキッチンに立ちます。営業時間を変えたのは2025年7月、睡眠リズムの変化がきっかけでした。しじみ汁とご飯にハムエッグが定番の単身赴任者、夜行バス到着後に腹ごしらえする若者たち、300gのビフテキを平らげて仕事に向かう女性など、朝ごはんのスタイルや量は人ぞれぞれ。それもそのはず、この店のコンセプトは「店主が食べたいものを作るお店」であり、「お客さんに食べたいものを食べてもらうお店」なのです。

店舗はJRの高架下にある通称「アベック通り」沿いにある

「日曜デリ」の日、カウンターに所狭しと並ぶ総菜の数々
そのコンセプトは「日曜デリ」(夏季はお休み)からも伝わってきます。月に一度の「日曜デリ」では、器にたっぷり盛られた総菜の中から、好きなものを選んで持ち帰ることができます。ある日のメニューは、豚ロース生姜焼きのふきのとう味噌添え、中華スパイス鶏唐揚げネギ大葉ソース、白イカと玉ねぎとオリーブのマリネ、レンコダイとじゃがいものキッシュ、牛タンと野菜のスープ、いちごのパウンドケーキなど(これでもごく一部)。どれにしようか、いつも目移りします。

愛用の食器やスパイスの瓶が並ぶキッチン
ワンオペで多種多様なメニューを提供する日向さんは、東京時代にイタリアン、フレンチ、テクス・メクス(メキシコ風のアメリカ料理)、タイ、ベトナムなど様々なジャンルの飲食店で調理と運営の経験を積み、移住した島根県松江市で15年前に「ラボキッチン」を開店しました。

「水曜ごはんものの日」に登場した「珉珉風焼きそば」。
醤油味、野菜の食感が心地よくて1.5人前の麺をさらりと完食
このお店には「食堂」のひとことでは表現しきれない魅力があります。それは、「料理研究家」ならぬ「料理実験家」を自称する日向さんが、「ラボ(実験場)」という名のキッチンで生み出す料理すべてに物語があるから、かもしれません。例えば、こどもの頃に町中華で食べた味を再現した「珉珉風焼きそば」。当時の恋人に食べさせたくて習得した、チリコンカルネなどのテクス・メクス料理。厨房で仕込んだソースで作る大好きなアマトリチャーナ。子育ての傍ら、父母が営む店で提供を始めた、キッシュやパスタ。「食べたいものがどこにもなくて」作り始めた、担々麺やエビチリなどの中華メニュー……。料理にまつわる物語をカウンター越しに聞いていると、彼女が積み重ねてきた時間とともにある料理を、丁寧に味わいたいと思うのです。

2階には本好きの日向さんが集めた本がずらり。
こどもの頃に読んでいた本を見付けて、思わず顔がほころぶ
取材協力
LAB KITCHEN 桃井日向さん
写真
桃井日向さん(2枚目)、その他は筆者撮影
店舗情報
LAB KITCHEN
島根県松江市寺町210-2
毎週月・火曜日休業(その他臨時休業あり)
営業時間 6:30~14:00
Instagram:@lab_kitchen_matsue
Facebook:ラボキッチン
(綾仁千鶴子)


