5)月1企画の上映 誰からも搾取しない、無理のないスタイルで
仮に始めたのは、月1企画、1週間程度、1日数回上映する、というスタイルだった。ギャラリーなどならいざしらず、映画館としては聞いたことのない上映形態だ。
三宅 最初は一般的な、1日にさまざまな映画を何本もかけている映画館が頭にあったんですけど、急にそれを始めるのは、自分たちとしては無理がありました。とりあえず月1本というか、1企画のプレオープン期間を1年ぐらいやってみようかと始めてみたら、これがベストだなと感じましたね。
鳥取は人口が少ない県なので、映画館で映画を観る人口も相対的に少なくなる。年に何百本と観るような人たちも当然少ない。自分たちも子どもが生まれて、子育てが始まってからは月に何本も観に行けなくて、1ヶ月に1本見るのですら精一杯みたいな時期もありました。いいなと思う映画をこちらがかけても、観に来てもらえないようなペースだったらよくない。
それなら、絶対に観に来てほしいと思う映画を、みんなが来られるペースでかけていくのが、自分たちとしても一番気持ちがいいな、と思いました。
自分たちにも、観客にとっても良いペースの、無理のないスタイルは、誰からも「搾取しない」ことにもつながっている。
三宅 わたしたちが映画館をはじめる頃、東京のミニシアターなどでの「やりがい搾取」について声を上げる人が出てきていました。自分たちが好きな映画にかかわる仕事をするときに、誰からも搾取したくはない。そして、自分たちも無理しない、自分たちからも搾取しない、というのは共通認識としてありました。まずはふたりで楽しくできる範囲でやってみよう、という。
無理する/させる、搾取する/されることは、今の社会では容易に起こってくる。そうしたいわけではなくても、構造的にそうなってしまいがちだ。高い家賃や人件費などを払って、その場所をまわすうちに、誰かが苦しくなり、消費されるサイクルが生まれてしまう。
ジグシアターの無理しない、嫌なことはしないというスタイルは、構造的にそうならず続けていくためのやりかたといえるかもしれない。そこには、鳥取という場所も大きくかかわっている。
三宅 鳥取県の今の場所だから、このやり方が可能だったと思います。都会の駅前のような便利なところでやっていたとしたら、家賃のランニングコストがたぶんすごいです。ずっと稼働させていかないといけないし、そうしようと思ったら誰かを雇う必要も出てきます。今の家賃だったら、このペースでわたしたちは暮らしていけるなって。経済的な部分も含めて、この鳥取の環境があって、ジグシアターのかたちになりました。

奥にあるのがジグシアターのエントランス。上映時には、扉は開かれている


