アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#157
2026.06

シネマと本とパンと まちの「あいだ」を潤す

3 映画館「ジグシアター」 鳥取県東伯郡湯梨浜町
6)戸惑いを案内する

月に1企画の上映となると、どんな作品を選ぶかはとても大きい。
柴田さんと三宅さんはかなり頭を悩ませた末、こけら落としの1本には、ホン・サンスの当時の新作『逃げた女』を選んだ。わかりやすい感動を呼ぶたぐいの作品ではない。ほとんどが女性たちの室内の会話だけで進行し、とくに何も起こらないといえば起こらない。プレイベントを始める前には「戸惑いを案内する」映画館と謳っていたが、かんたんにこう、と捉えにくい作品である。

柴田 今思い出してみると、エキセントリックな物語で戸惑わせるとかではないんだっていう。『逃げた女』にはホン・サンスの独自のスタイルが入っていると思うんです。今後自分たちがかけていく映画は、その監督自身が選び出した独自のスタイルがあるものを、ということで、それが伝わりやすいかなと思いました。

観客は戸惑うだろうと思いつつ、ふたを開けてみたら、柴田さんと三宅さんが思っていたより来場者はずっと多く、良かったという反応も多々あった

三宅 今でもそうですけど、特に最初の頃は1本、1本映画をかけるたびに、この作品をそんなふうに面白いと思ってくれるんだ、という驚きがありました。お客さんからもらう反応は、次に上映する作品にも影響していきます。それは、単純に観客が喜んでくれる映画をかけるというわけではなく、もっと映画を好きになってもっと楽しんでいけるように、映画体験を編んでいくような感覚です。

心から薦めたい、観てもらいたいという作品を選んで、届けるための準備にも時間をかける。その監督の過去作を観て、インタビューや関連する書籍なども読み込み、発信もていねいに行う。あれも、これもではなく、「これだけ」を深めていくのだ。それもふくめて、今のサイクルはちょうど良いという。

三宅 1ヶ月に1企画だと、その作品や監督とじっくり向き合う時間があります。上映後にお客さんと感想をおしゃべりしているあいだに、作品への理解も深まっていきます。

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