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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#78
2019.11

場をつくる × クラウドファンディング

京都・THEATRE E9 KYOTO 後編

引き続き、民間の有志によって立ち上げられた小劇場「THEATRE E9 KYOTO」の開館までの軌跡を追っていく。
前編では、2回にわたるクラウドファンディングによる資金調達と、東九条に住む人々との交流という視点から紹介した。THEATRE E9 KYOTO(以下、E9)の芸術監督のあごうさとしと支配人の蔭山陽太は、クラウドファンディングは「京都から小劇場がなくなっていいのか?」という問いかけだったと語った。その応答として「京都に小劇場や劇場文化が必要だ」と思う1,000人以上から合計3,000万円近い支援が集まった。一方、劇場とは縁遠かった東九条では、あごうと蔭山が1軒1軒の家を訪ねたり、夏祭りにも参加するなど、地道に小劇場とその活動への理解を説いて回っていた。いまでは、住民自らがE9設立のための寄付と署名を集めるなど深い信頼を得ている。

だが、クラウドファンディングと住民からの寄付だけでは、まだ資金が足りない。前編で述べたように、私有財産となる施設の建設に国や自治体からの補助はない。

あごうや蔭山らは、民間の助成団体や企業に働きかけ、資金援助を依頼した。そして、ネーミングライツを引き受けた寺田倉庫株式会社、助成を行った公益財団法人セゾン文化財団、E9の2階のコワーキングスペースと1階のカフェを開設した株式会社La Himawariを始め、特別協賛の株式会社グランマーブル、株式会社八清、株式会社江寿など、多様な企業がE9の設立に助力している。

利益追求を目的とする企業と、芸術性や先進性を重視する小劇場。一見、相容れない両者が小劇場という「場をつくる」事業を介して出会い、協力し合う。そこで交換された「価値」とは何か。そして、多くの支援を受けてつくられたこの「場」で芸術に関わる者、表現者たちは何を「価値」として創造していくのか。後編では、この2つの視点からE9が提言しているものを探っていく。

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E9の2階はLa Himawariが運営するコラボレーションオフィス「Collabo Office E9 」が入居。E9のオープンに先立つ記者発表後、E9の運営母体であるアーツシード京都に2階部分の使用を打診してこられた。現在、コラボオフィスとしては京都で最も会員が多く、積極的な活動を展開している

E9の2階はLa Himawariが運営するコラボレーションオフィス「Collabo Office E9 」が入居。E9のオープンに先立つ記者発表後、E9の運営母体であるアーツシード京都に2階部分の使用を打診してこられた。現在、コラボオフィスとしては京都で最も会員が多く、積極的な活動を展開している

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La HimawariはE9と棟続きのカフェ「Odashi」の運営も手がける。会員はもちろんのこと、観劇前後の利用客も多い