アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#78
2019.11

場をつくる × クラウドファンディング

後編 京都・THEATRE E9 KYOTO
2)「ひと」の情熱と経験を信頼する
大野雅章さん、山口一幸さん(京都信用金庫)1

京都信用金庫本店長の大野雅章、営業部課長でTHEATRE E9 KYOTO担当の山口一幸から、金融機関としてどんな「価値」をE9に見出し、融資を判断したのかをうかがった。

京都信用金庫は、大正12(1923)年に前身となる「有限責任京都繁栄信用組合」が設立され、昭和26(1951)年に京都信用金庫として発足した金融機関である。京都を中心に滋賀や北大阪を営業拠点とし、個人の預金や資産運用、法人(事業主)の資金調達を業務としている。基本理念として「新しい時代のコミュニティ・バンク」を掲げ、「お客さまとの共通価値を創造する活動」として中小企業や個人の事業主への融資や経営相談をきめ細かく行っている。
本店長の大野は、E9に建物と土地を貸している株式会社八清の社長からの紹介で、あごう・蔭山に出会った。

大野雅章さん

大野雅章さん

大野 2017年ごろだったと思います。八清の社長さんからご紹介いただき、アーツシード京都の事務所に伺いました。1回目のクラウドファンディングを終えられた頃で、その時点で総予算の7割ぐらいまでは自力で集めておられましたが、まだ3,000万円ほど必要だとおっしゃられていたと思います。クラウドファンディングの2回目をされる予定ではあったのですが、お会いする前はプロジェクト自体厳しい状況にあると見ていました。

あごうと蔭山は、京都信用金庫からの融資を受けるにあたって数年間の事業計画書を作成し、数年後には黒字となって滞りなく返済できるプランを示している。しかし、その黒字幅はわずかなものであった。あごうや蔭山ですら、金融機関からみて優良で安全な事業者とはいえないと思っていた。しかし、京都信用金庫は2,500万円の融資を行った。事業実績のない団体への融資としてはかなり大きな額である。

大野 私たちがご融資するときに一番重要なのは、やっぱり「ひと」なんです。その事業に対する熱意がどれほどのものか。それがどの程度、継続されていくのかを見ています。しかし、あごうさん、蔭山さんだけでなく、アーツシード京都の理事の方々の熱意は非常に高く、事業の継続性を信頼できました。
その上で、私たちが判断材料にしたのは、あごうさんが以前に運営をまかされていたアトリエ劇研です。小劇場は赤字が当たり前と多くのひとが思っているなかで、あごうさんはさまざまな手を打たれて黒字に転換された。金融機関としては、その時の経験は非常に大きい判断材料になりました。蔭山さんもロームシアター京都の立ち上げに関わり、舞台芸術の愛好家だけでなく多くのひとが活用される場所にされた経験を持っておられました。他の理事の方々にもお話をうかがいましたが、それぞれ芸術面で活躍されているだけでなく、ひととして素晴らしいと思いました。もちろん、リスクはありますが地域の金融機関として十分に取り組める事業だと総合的にみました。そうした「ひと」を見て、私たちは判断しているのです。

山口一幸さん

山口一幸さん

山口 あごうさんは劇場をつくるために、東九条地域に通って1軒1軒にご挨拶されていました。最初は反対していたひとが今では寄付を率先して集めるほどの関係性を築いておられました。計画の実現のためにかかれている汗、情熱に私たちは共感したのです。

今みえている経済的な成功だけが実績ではない。そもそもの「思い」はなにか。「思い」を実現させるためにどんな行動をし、どんなひととの関係を築いてきたのか。未来への投資を決断させるのは、過去の行動なのだ。