1)文化芸術をつくるお金 企業の資金援助
あごうと蔭山は、京都を中心に多くの企業をたずね、資金援助を申し込んだ。直接的には、劇場建設の費用を捻出するためである。だが、その背後には、これまでの芸術文化とそれを支えるお金の関係への疑問があった。
現在の日本において、文化施設、特に劇場は入場料収入だけでは成り立たない。文化庁をはじめとした公的機関から助成金を得ることを前提に、公演や作品制作の計画を立てるのが通常になっている。表現者の想いや企画よりも、助成金の趣旨にあっているかどうかが優先される場面もある。アート・マネジメントとは、「助成金を得る技術」と言い換えられてしまうような状況が続いているのだ。
この状況は表現者にとって、舞台芸術にとってよいものだろうか。表現者側に立ちながら、経済も循環させる方法はないのだろうか。蔭山とあごうにとってE9の立ち上げは、これまでの文化芸術で当たり前とされてきたシステムを疑い、新しいシステムや経営の手法を発明していくことでもあった。そのひとつが企業からの資金援助を得ることだと考えた蔭山とあごうは、計画当初から企業への働きかけを積極的に行っていた。では、企業は、民間の文化施設であるE9からの資金援助の依頼をどのように受け止めたのだろうか。
E9が設立の危機にあるときに資金融資を行ったのは、京都信用金庫であった。