アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#128
2024.01

育つ環境をととのえる 人も、自然も

番外編 「のぞく」と「のぞむ」/ 言葉を入り口に  瀬戸昌宣×細馬宏通 対談

「育つ環境をととのえる」ことを実践するNPO法人SOMAと代表の生態学者・瀬戸昌宣(まさのり)さん。ここまで、現在の活動「山結び」を3回にわたって取り上げてきた。今回は番外編として、行動学者の細馬宏通さんと瀬戸さんの対話をお届けする。
細馬さんには2017年、2回にわたって、じっくりお話を伺っている。題して「横道と観察」(#51#52)。好奇心の赴くままに、ものごとを子細に観察して考えつづけ、アウトプットしていく。その過程は一本道ではなく、横道に逸れることも多々ある。守備範囲はかなり広く、人間の行動はもちろんのこと、映像、音楽、マンガ、絵葉書などのメディア全般にわたっている。
今回、細馬さんに対談をオファーしたところ、「せっかくなら山に入って歩きながら、っていうのはどう?」と提案していただいた。まさに、願ったり叶ったり。体感を通して生まれる対話は、人と自然のかかわりについて、また違う角度から照らし出してくれると思った。
東京に住む細馬さんと、福岡に住む瀬戸さんの間をとって、京都市左京区の善気山に登ることにした。東山三十六峰のひとつで、低山ながら植生が豊かな山だ。頂上からは、五山の送り火で知られる大文字山の大の字が臨める。
対話は山を歩きながら、山を下りた後は本のある部屋で。2人の会話は行きつ戻りつ、あちらこちらに飛びながら進んでいった。
みたもの、体感したことをどう捉えるのか。そして、そこから思考をどのようにふくらませていくのか。しなやかな発想の過程を記録する。

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善気山の麓には、名刹・法然院がある / 細馬さんは大学時代を京都で過ごし、大文字山に調査に行っては「駆け下りていた」という。瀬戸さんもまた、京都には所縁が深い / 付近に「鹿ヶ谷」という地名があるように、鹿の多い山。鹿の角の研ぎ跡が / 271メートルの低山ながら、西方向には京都市内が、東方向には大文字山が臨める