日本の九州より面積は少し小さいぐらいだけど、中南部の嘉義というまちのあたりにはしる北回帰線を境として、北は亜熱帯、南は熱帯とひとつの島のなかで異なる気候をもつ台湾。
そんな訳で、「熱帯」に属するここ台南では、取材時の4月ですでに真夏のような熱気が路上に溜まってゆれている。華語では太陽がじりじりと照りつける南部の暑さを「太陽がおおきい」と表現するが、まさに巨大なエネルギーをたたえた太陽が頭上にのしかかってくるようだ。
そんなまち歩きの最中に通りがかった、昔ながらの生フルーツのジュースのお店で休憩をいれた。すると、おじさんがジュースといっしょに古いポータブルカセットデッキを持ってきて、日本の演歌をかけてくれた。フルーツジュースの赤に黄色にオレンジ。熱帯のエキスそのもののようなジュースの色が風景のなかで差し色になって、ひんやりとした液体が熱中症寸前の頭に染み渡り、あたりには演歌がひびき、おじさんはニコニコとしている。
気候と色と暮らしが溶け合いながら、複雑な歴史を積み重ねている台南。このまちと、ひととアートの関わりを考える特集、1回目はユニークな芸術祭「ネクストアート台南」を中心に取材した。
今回は、まちの歴史や成り立ちを生かしたギャラリー取り組みや、行政のありかたなどを見ていきたい。