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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#75
2019.08

まちを耕すアート 台湾・台南

2 場の履歴を生かす
3)アートを支える行政 自治体の動力
台南市文化局副局長・周雅菁さん1

ここまで黄さんや李さんにお話を聞いてきて感じたのは、現在の台南におけるアートの動きには、どうやら「台南市」という自治体が大きく動力として関わっているらしいことだ。
例えば、ネクストアート台南や台南国際撮影節にしろ、台南市が主催となり、そこから民間のアーティストやギャラリーと密接に連携を取っている。また、最近の台南市内は文化施設関連の建設・修復ラッシュで、日本時代の警察署として建設された建築が「台南市立美術館1号館」として2018年に修復され、今年2019年には日本の建築家・坂茂が設計した「台南市立美術館2号館」がオープンしている。
そうした一連の自治体主導の動きについて、台南市文化局副局長の周雅菁(ヂョウ・ヤージン)さんに自治体が積極的にアートに関わるようになった過程についてお話を伺った。
 

周雅菁さん

周雅菁さん

———台南は台湾で最も古くから発達した都市ですが、今は台北を中心とした北部に多くのものが集中しているのが現状です。北部との文化格差が歴然としてあるなかで、南部から積極的に文化を発信していく必要性を感じていましたが、そのためには文化的・美的水準を地域教育によって高める必要があります。そこでアートの公募展を早くより創設しました。
1987年より始まった南瀛獎」は台南に限らず台湾の国籍を持ったひとの作品を募ったもので、地方自治体による美術賞の先駆けといえるでしょう。また台南市民を対象とした台南美展などもあります。
こういった公募展の成果としては、台北から発信される公募展と同じように、南瀛獎にも応募するアーティストが増えていることです。また、製糖工場など日本時代から遺る建築を文化園区としてリノベーションし、東南アジアやヨーロッパ、日本など国外からのアーティストのレジデンスも積極的に行うことで、国際的な交流拠点として台南の位置を高めることにも力をいれています。

という字は、すべての生命の源となる豊潤な「海」という意味を持っている。「南のゆたかな海」という名前の美術賞があることに、創設した台南の人々の願い、そしてじぶんたちの土地への矜持と気概を感じ取ることができる。

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日本の現代建築家・坂茂が設計し、2019年にオープンした台南市美術館二(号)館。孔廟や林百貨などの台南の人気の観光エリアに位置するこの場所には、かつて日本時代には「台南神社」があった

坂茂が設計し、2019年にオープンした台南市美術館2号館。孔廟や林百貨などの台南の人気の観光エリアに位置するこの場所には、かつて日本時代には「台南神社」があった

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日本時代の東京美術学校(現在の東京芸大)に留学し、台湾人として初めて帝展に入選、戦後は228事件で銃殺された台湾を代表する近代油絵画家・陳澄波の作品。陳の作品は梅原龍三郎や藤島武二ら日本の画家の影響をうけながらも、植民地下における台湾の伝統的な風景と近代化していく風景との対比が描かれる

オープニング企画として、台湾を代表する近代油絵画家・陳澄波の作品が彼の生涯とともに展示されていた。日本時代の東京美術学校(現在の東京芸大)に留学し、台湾人として初めて帝展に入選、戦後は228事件で銃殺された台湾を代表する作家である。陳の作品は梅原龍三郎や藤島武二ら日本の画家の影響をうけながらも、植民地下における台湾の伝統的な風景と近代化していく風景との対比が描かれる