京都市上京区、西陣。ベンガラ格子の町家が立ち並ぶその通りを歩いていると、ガッシャン、ガッシャン、というリズミカルな力織機の音がどこからともなく聞こえてくる。その合間に、三拍に一拍くらいの心地よい間隔で、唐紙職人さんが営む文具の店、洋風のお干菓子の店、靴工房、蕎麦屋さん、パン屋さん、カフェ、ゲストハウスといった店々が顔を見せる。それらは一様に、古きよき町家の風情を残しながら、どこか新しさをも感じさせるたたずまいで、このまちにはずむような活気を与えている。そんな伝統的なまちなみと「今っぽさ」が入り交じる西陣は、今、日本有数の織物産地であると同時に、観光客の姿を見ない日はない一大観光地ともなっている。
このような流れを西陣に引き寄せたのは、ほかならぬ「町家倶楽部」だ。町家倶楽部とは、西陣の空き町家の持ち主と、その空き町家を借りたいひとの橋渡しを行ってきた、小さな民間団体である。その活動は「不動産物件のあっせん」ではなく、あくまで「持ち主と借り主の仲人」だという。どうやら町家倶楽部の発足の経緯を知らずして、西陣の今日の風景について語ることはできないようだ。まずは世話役のお二人に会い、この18年を振り返ってもらった。
風信帖