3000年の歴史があるという日本の名湯、道後温泉。今回は、一大観光地である道後温泉地区を舞台に繰り広げられるアートプロジェクトの10年に渡る変遷を、3回にわたって取り上げる最終回となる。
これまで2回の記事を振り返ってみる。観光の目玉である道後温泉本館の長期保存修理工事というまちの危機感を背景に、地域の活性化対策として2014年に始まったアートプロジェクトは、「道後オンセナート」という4年に一度の大祭をはさんで、かたちを変えながら続いている。はじめは賑わいをもたらすツールとしての色合いの濃かったアートが、2019年から2020年にかけての地域を巻き込んだ参加型プロジェクトの体験によって、アートプロジェクトを我が事として捉える変化がまちのなかに生まれた。そして2021年には50名のクリエーターの短期滞在プログラム「クリエイティブステイ」を通して多くの交流が生まれ、そのつながりは、現在開催中の道後オンセナート2022にも生きている。歴史あるまちに生まれたアートプロジェクトは、その都度新しいレイヤーを築きながら、まちとアートの関係にさまざまな可能性を提示して今に至っている。
最終回は、これまで追ってきた道後温泉でのアートの取り組みにかかわる地元の若手の視線を中心にふりかえり、これからの道後のアートプロジェクトのゆくえを見通してみる。
風信帖