アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

風信帖 各地の出来事から出版レビュー

TOP >>  風信帖
このページをシェア Twitter facebook
#105

生きた芸術作品 盆栽
― 埼玉県さいたま市

さいたま市には、「盆栽町」という地名があります。
この一帯は、1923年の関東大震災で被災した東京の盆栽業者が集団で移り住み、大宮盆栽村を形成した所です。最盛期には約30軒の盆栽園があったそうですが、現在では数を減らして数軒となっています。
しかし今でも盆栽の聖地として、国内ばかりか世界各地の盆栽愛好家が訪れて賑わいを見せています。盆栽園は公開されているところもあるので、美しく整備された盆栽村周辺を散策しながら誰でも立ち寄ることができます。
2010年には、近隣に世界初の公立盆栽美術館「大宮盆栽美術館」がオープンしました。日本を代表する名品盆栽100点以上の他、盆器(鉢)、水石、浮世絵など盆栽に関する作品が数多く所蔵されています。
美術館の入口を入るとすぐに「季節の一鉢」が出迎えてくれます。私が訪れた時は椿が展示されていました。左側の壁は一面がガラスになっているので、盆栽庭園を一望することができます。
チケットを買って入場すると、展示室にはタッチパネルなどによる分かりやすい解説とともに、盆栽や盆器などが展示されています。奥には座敷飾りがあり、「真」「行」「草」の格式に分けられたそれぞれの床の間に合わせた盆栽、掛け軸、添え等のしつらえを見ることができます。ギャラリーはゆったりしているので、落ち着いて鑑賞することができます。
盆栽庭園に出てすぐの「今日の一枚」のエリアでは、写真撮影が可能です。この日は、龍を思わせる人気の五葉松、銘「青龍(せいりゅう)」が展示されていました。この盆栽も盆栽特有の神(ジン)、舎利(シャリ)という白骨化した幹や枝を持ち、生と死を併せ持ったところがひとつの見どころです。
また、庭園で一際目を引く盆栽があります。高さ160cm、横幅180cmの巨大盆栽、五葉松の銘「千代の松」です。美しく勢いがあり、魅了される一品です。
盆栽は長い時間をかけて、美と生を追求した結果生み出される生きた芸術作品です。皆さんも何百年も生きている盆栽から、元気をもらいにいらしてください。

(小野行幸)

大宮盆栽美術館
http://www.bonsai-art-museum.jp

エントランスを飾る季節の一鉢。椿、銘「玉之浦」

エントランスを飾る季節の一鉢。椿、銘「玉之浦」

五葉松。銘「青龍(せいりゅう)」

五葉松、銘「青龍」

本館2F盆栽テラスから見る盆栽庭園

本館2F盆栽テラスから見る盆栽庭園