アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#82
2020.03

自分でつくる公共 グランドレベル=1階の試み

東京・森下 「私設公民館」喫茶ランドリー 2
1)喫茶ランドリーの1日 スタッフたち

喫茶ランドリーの混み具合は、朝から洗濯やお茶するひとで混み合う日もあれば、ランチでにぎわう日もあり、静かな午後を迎える日もある。日によってまちまちだ。
ふだんは1人体制で回しており、スタッフはさおりさん、モコさん、ゆみさん、かなこさんの4人。みな半径300メートル圏内に住んでいる。スタッフのほとんどはお客として訪れてから、田中さんと大西さんと話すようになり、スタッフとして働くようになったそうだ。
この日はスタッフのみなさんにお話を聞くことができた。ここでは、それぞれができることを生かしてお店に関わっている。フードメニューがほとんどなかった状態から、料理学校に通った腕前を生かして、メニューを開発の中心となったのは、スタッフ第号のさおりさん。スパイスをすりつぶすところからつくった野菜いっぱいのカレー、具材たっぷりの見た目も楽しいオープンサンドなど、家庭料理のような親しみやすさと、家で毎日つくるにはちょっとハードルの高い華やかさのある料理をつくっている。
ゆみさんはガーデニング好き。開店当初、大西さんが殺風景だった店のエントランスを気にしていたところ、自発的に鉢植えの花を持ってきて、ディスプレイし育て始めてくださったのだという。

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おっとりした、柔らかな雰囲気のさおりさん / リピーターが続出、野菜たっぷりの「喫ラのカレーライス」 / かなこさんとお子さんたち。学校帰りに立ち寄って、宿題したり遊んだりしてから一緒に帰る / 話し上手なモコさん。銭湯の番台をはじめ、ひとと接するのは「天職」だと思っている

田中さんも大西さんも、スタッフには「お店のひとではなく、あなたのままでいてください」という声をかけている。それが前回も書いたように、彼女たちの能動性を生かすということなのだ。
彼女たちの接客態度はとても自然だ。ごくふつうに客に声をかけ、笑顔があふれる。ひとが好きで接客上手なスタッフのモコさんによると「マニュアルがないから、それぞれ自分の思うような接客をしている」そう。たしかに、入って「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」と、自然なあいさつで迎えられると、家の延長のようなくつろいだ気持ちになれる。