アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#136
2024.09

食文化を次代につなぐ 女性たちの、生きる知恵

2 津軽あかつきの会 「かっちゃ」の台所 青森県弘前市(津軽地方)
1)臨機応変、柔軟に
その日、そのメンバーでできること

朝の9時頃、あかつきの会のメンバーが台所に集まり始める。ここは弘前市にある民家の一角、元々はあかつきの会の会長・工藤さんの自宅の物置を改装して台所になった場所だ。集まった面々は挨拶もそこそこに、気づけば速やかに手が動き始めている。この日の献立を見て、冷蔵庫から食材を取り出し吟味し、声を掛け合いながらそれぞれ下ごしらえを始めてゆく。それぞれ、得意な食材に取り掛かってみたり、調理してみたい工程に挑戦してみたり、覚えたい料理があれば手伝ったりしているそう。どの人にも定位置はなく、動機さまざまに、流動的に立ち位置が決まる。今日のメンバーは7人、このメンバーで食事会が始まるだいたい12時頃までに12品をつくってゆく。都度、その日に来られる人が集まってつくるからメンバーは毎回変動し、少ないときには3ほどでも同じような品数をつくることもあるというから驚きだ。

献立を見ながらも、ただしそれに従っていくわけでもない。野菜の状態や、メンバーが持参した山菜などの素材を見て、メニューを変えていく。レシピを教わった先人たちにならって、食材は旬のものを使う。だから天候などに左右されて手に入らなかった日には柔軟に内容を変更する。この日、「うどの酢味噌」としていた献立は、いつの間にか「ヤツアザミの酢味噌」に変わっていた。

「しらたき、ちょっと多いけど、残していても仕方ないもんね」
「これ、アク取っちゃうよ?」
「本当はもやしの根を取るときに長さ揃えるんだけど、忘れてたなあ……」
調理する手と口が一緒に動いて、台所はにわかに賑々しく常にどこかで笑いが起こっている。

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新鮮な食材は、地元の農家や、畑をする会員からも届く / この日予定していた献立。献立は季節ごとにだいたい決まっているが、地のものを使うため、その日の採れ具合などで変わったりもする