前号(#119)で訪ねた神奈川県・葉山一色海岸では、潮にさらされても分解されず残っているビニール袋やプラカップがあちこちに見つかった。砂浜に目を凝らすと、カラフルな砂粒のようにたくさんのマイクロプラスチックが紛れていた。もとは地球に埋まっていた石油が「軽くて安くて腐らない」特性をもつプラスチックに生まれ変わり、瞬く間に量産されて衣食住からIT家電、医療などあらゆる分野に普及した。砂浜に転がるプラスチックも、きっと誰かの生活を快適にし、健康や命を支えてきたはずだ。けれど「腐らない」素材は万能薬のように使った結果、役目を追えても半永久的に地上に蓄積され、海を漂うゴミとなった。大量の海洋ゴミを飲み込んだクジラが命を落としたニュースも耳に新しい。30年後には魚よりもプラスチックのほうが多い海になるともいわれている。救世主だったプラスチックが、知らぬ間に脅威になっている。まずは一人でも多くの人がその現状に意識を向けること、そして自分なりに継続可能なゴミ減らし方法を見つけることが、この危機を脱する糸口のように思える。
前回とりあげた「スポGOMI」では、「すでに出てしまったゴミ」に目を向け、ゴミ拾いを競技として楽しみながら、参加者がゴミのある風景と出会い、ゴミを「自分ごと化」するきっかけをつくっていた。今号では「これから生まれるゴミ」に目を向け、日々の買い物を通してゴミを生まない暮らしを提案する活動体「くるん京都」の取り組みをとりあげる。本記事は、3回連続特集の2回目となる。
くるん京都の活動拠点である乾物と生活雑貨の店「すみれや」は、京都市左京区にある。このまちには、店主の個性が光るユニークな個人商店がたくさんあり、人と人との距離が近い。まだスーパーもプラスチックもなく、商店街や近所のお店で竹ザルや籠で買い物していた時代の雰囲気がいまだ残る。大学が多いこともあってか、全体に社会的な意識も高く活気があり、新旧の文化が入り混じるまちだ。そんな特殊ともいえる地域の規模感ならではの、小さな店をめぐるコミュニティから生まれた軽やかな活動を辿りながら、明日からでも、自分にもできるゴミ減らしのヒントを探したい。