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アネモメトリ -風の手帖-

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#120
2023.05

ゴミを「自分ごと」化する

2 生活者の目線から 「くるん京都」の取り組み 
2)はじまりはSNSでのアンケート

くるん京都の発起人の一人、小川慈さんは、5年ほど前に自宅で出るプラスチックゴミが多いことにうんざりして、ゴミを減らす方法はないかと調べるうちに『ゼロ・ウェイスト・ホーム ーごみを出さないシンプルな暮らし』(アノニマ・スタジオ、ベア・ジョンソン著 服部雄一郎訳)と出会い、量り売りのお店に興味をもつようになった。

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小川慈さん

———プラスチックの容器って、すごく立派なのに1回で捨ててしまうのがとてももったいないじゃないですか。いろいろ調べていたら、この本に「買い物をなるべくマイ容器でする」と書いてあって面白いなと。これなら自分にもできそうだと思いました。でも周りに量り売りの専門店があまりなくて、ふつうにお買い物をして「次に来た時こういう容器にいれてもらってもいいですか?」って聞くことからはじめました。また来てくれるだろうというので「いいですよ」って言われることが多かったですね。

折しもコロナ禍で大阪から京都に転勤になり、医療関係者である小川さんはステイホーム生活を強いられることになった。お店の開拓もできず悶々とするなかで、思い立って量り売りの認知度や潜在需要についてのアンケート調査を行った。ご自身のツイッターとブログ上で拡散したため、もともとゴミを減らしたい人に偏ることは予測されたものの、309名の回答が集まった結果、多くの人が量り売りに興味はあっても、なかなか最初の一歩が踏み出せていないとわかった。自由記載の欄には、実家を出てみたら普通に暮らすだけで大量のゴミが出ることにはじめて気づいた、量り売りにしたことでお店の廃棄物が増えたというニュースを見た、マイ容器の便利さを実感している、量の目安がわからず逆に高くつかないか不安……などたくさんの声が寄せられ、小川さんもその思いに共感して「夏の自由研究くらいのノリではじめたのに、卒論ぐらいの熱量になった」という。熱いレポートの全貌は、こちらで読むことができる。

———このアンケートの結果は、無印良品やイオンモールにも送りましたが、もう少し足元からやらないと、と思っていて。とはいえ京都に引っ越したばかりで知り合いもいなかったので、「プラなし生活」というサイトで見つけたすみれやの春山さんに「こんなアンケートをしてみたんですが、ご意見いただけませんか?」とメールしました。

量り売りはもちろん、これはと思う生産者を紹介したり、種の交換BOXや欲しいものあげたいもの掲示板を設置したりなど、お金では買えない人やものの循環を大切に店を営んできた春山さんにとっても、消費者の実感を映し出した小川さんのレポートはとても興味深いものだった。読んですぐに返事をし、お客さんや知人のなかから興味のありそうな数人に声をかけてすみれやの2階に集めたのが、くるん京都の活動のはじまりとなった。

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春山文枝さん / 店内には野菜や生活雑貨、書籍などさまざまに並ぶ / 一角にある「ほしいあげるボード」と「種の交換BOX」。大人から子どもまで、自由に必要なものを交換し合える実験的な場。ちょっとした雑貨は「ご自由にどうぞ」コーナーもある