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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#120
2023.05

ゴミを「自分ごと」化する

2 生活者の目線から 「くるん京都」の取り組み 
3)量り売りを身近にする「買い物マップ」づくり

小川さんのアンケート結果によれば、量り売りを利用したいと回答したのは309人中300人。主な理由は「容器包装などのゴミを減らしたい」「必要な分だけ購入したい」というものだったが、実際に利用しているのはその3割にとどまる。なぜなら「近所に量り売りのお店がない」からだ。量り売りをもっと気軽に、身近なところからはじめる人が1人でも増えてほしいと、「くるん買い物マップ」の制作がはじまった。

マップづくりにあたっては、メンバーそれぞれがマイ容器や梱包なしに対応してくれるお店情報を集めたり、知り合いのお店に協力を呼びかけたりしながら、一軒ずつていねいにやりとりを重ねる。お互いの理解と信頼感を深めながら、少しずつ輪は広がり、現在京都市を中心におよそ70店舗が掲載されている。さまざまなお店に働きかけるなかで、小川さんは大きく次の4つのタイプがあると感じている。

1.環境問題に意識が高く、実際にパッケージフリーに取り組んでいる。
2.環境問題への意識は高くはないが、昔ながらのお豆腐屋さんなどパッケージフリーに対応している
3.環境問題に対する意識もなくパッケージフリーにも対応していないが、頼まれたら対応する。
4.そもそも対応不可。

———いきなり4を変えようとするのは難しいので、まずは1、2のお店を開拓してきちんと情報共有することと、3のお店に環境問題に対する意識をもってもらうことが、私たちの仕事のメインかなと思っています。3割変わったら全体が変わるとも言いますし、周りが変わってきたからうちもやった方がいいのかな、と思ってもらうためにも、まずはその3割をつくれたらと。(小川さん)

量り売りが浸透するには、売る側だけでなく買う側の意識の変化も必要だ。アンケートでは「マイ容器を持参するのが負担」という声も多かったが、くるん京都のメンバーは口を揃えて「マイ容器は楽」だという。

———コーヒー豆とか液体の洗剤とかは、買って帰って容器にいれかえようとすると溢れたりするので、はじめから容れ物をもっていった方が便利なんです。イメージとしてはマイ容器は面倒くさいんだけど、そのベクトルがやってみると変わるかもしれない。(佐藤さん)

———一生懸命詰め替えて、元入ってた容れ物をきれいにして、分別して、って、買い物してからゴミを捨てるまでのトータルの手間を考えたら、最初からマイ容器で買い物した方が楽ですよね。(小川さん)

———便利とか楽なこと。自分にやさしく、一歩ずつやること。これが大切。今すぐ普通のスーパーのものは全部買わない、って思うとすごく苦しくなる。暇があったら、ちょっと容器をもってこの店にいってみようとか、ちょっとずつ慣れていって、2回、3回と続けてうまく行ったら、だんだん楽になります。例えば私はヨガにいく時、最初はパン屋さんだけに寄って、つぎはあの豆腐屋さんにもいってみようって増やして、何も考えずに行けるお買い物のルートができました。(ビアンカさん)

くるん京都では今後もお買い物マップを充実させながら、はじめてマイ容器でお買い物をする人をメンバーがサポートするお買い物デビューツアー「マイ容器ピクニック」を計画しているという。慣れないことをひとりでがんばろうとするより、みんなで気楽に気長に取り組むことで楽しく心地よさの輪を広げる。それが量り売りを身近なものにするいちばんの近道かもしれない。

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マイボトルなどエコなアイテムを持参するメンバーたち。パン2つほどを巾着に入れてもらい、購入したというという小川さん。巾着は食べ終わったあとコンパクトにまとめられる優れもの / 高松さんは、すみれやでも馴染み深い商品であるミツロウラップに包んだおにぎりを昼食に。「なかなか捨てられなくて」と話す巾着は、子どもが小さい時に刺繍を入れてつくった思い出のものだ