4)売り手と買い手を対等に結ぶ
2023年1月にくるん京都が主催した「はじめよう、ごみを生まない小売」は、マップづくりを通して生まれた店との双方向のつながりをもとに、小売店同士の橋渡しをしていきたいというメンバーのアイデアが、京都市温暖化対策室の事業の一環として実現した初の公開オープンセミナーだ。2021年7月、京都に日本初の量り売り専門スーパーマーケットをオープンした「斗々屋」を講師に迎え、告知してすぐに満席となる盛況ぶりで、量り売りへの関心の高さが伺われた。前半では代表の梅田温子さんが、個包装しない小売りのノウハウをバックヤードから店頭に至るまでオープンに語り、後半のパネルディスカッションでは、普段ほぼ交流がないという小売店主同士がゴミと向き合う上での悩みや工夫を共有し、白熱した意見交換が終了後まで続いていた。ゴミ減らしを共通目標として、生活者の目線から売り手と買い手を対等に結ぶことのできるくるん京都ならではの内容に終了後の反響も大きく、メンバー自身も手ごたえを感じている。
———お店同士が協力し合ってリターナブル瓶を共通で回したり、今後小売店と一緒に展開できることがいろいろあるかもしれないですね。私も自分の店で扱っているもので生活していますが、ないものは他のお店に買いに行きますし。(春山さん)
———そうするとお客さんもお店同士でも便利だし、別の店で瓶を返すことをきっかけに、新しい常連さんの確保ができますよね。あとは食品ロスになるような余った野菜を引き取って売るネットワークをつくりたいとか、「ここはオーガニックの店なのに、なんでこんなにプラスチック容器に入れているんだ」ってすごく怒ってお客さんが帰ったっていう話も出ていました。そういう声がお店に届くことで、また変わるかもしれませんね。(佐藤さん)
セミナーのなかで、佐藤さんは包装資材にかかるコストを紹介していた。無料のように思えるプラ袋や発泡トレーにも約5円、印刷や形状の凝ったものでは約35円もかかっているものがあるというから驚く。「店側からこのコストと他の選択肢を示されたら、消費行動が変わるのではないか」という提案に共感した。もともと、多少の不便があってもゴミが減らせるなら過剰包装は要らないという人は多いのではないだろうか。値段が安くなるのであればなおさらだ。こんなふうに売り手と買い手の双方が常々感じている疑問を共有できれば、「ゴミを生まない」ための新しいルールづくりもスムーズに進みそうだ。