アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#115
2022.12

21世紀型の祭りをつくる

後編 わらじまつりの百年後を夢見て 福島県福島市
3)物語でつながる、わらじまつりと暁まいり

翌3日目、祭りの最終日。大わらじの奉納が信夫山・羽黒神社で行われた。その前夜、夜空に吊り上げられた大わらじを担いで、関係者が信夫山の斜面を上がってくる。鬱蒼と茂る緑をかき分けるように、ゆっくりと。コロナ禍でなければ、麓から山頂の羽黒神社まで登るところ、途中までは車で入れた。一般公開も2022年はできず、関係者のみでの本当のフィナーレである。

わらじまつりが「信夫三山暁まいり」(以下、暁まいり)に奉納される大わらじをもとにつくられたことは前号でも述べた。暁まいりは江戸時代から続く行事で、人々は毎年2月10日、厳寒の時期に大きなわらじを担いで山を登り、奉納してきた。たいそう難儀な行事なのに、その由来は明らかではない。ちなみに、羽黒神社の始まりもよくわかっていない。なぜやるかは不明だけれど、「やるべきこと」として続いてきた。

担いできた数十人がロープを引き、わらじを立ち上げる一方で、鉄塔の上にいる若き職人が吊り上げていく。
コロナ禍により、2020年に奉納されたままで、年季の入った暁まいりのわらじと、2022年のわらじまつりの大わらじ。並び立つようすを見ていると、大きな物語が土台となった新生わらじまつりによって、暁まいりの成り立ちも垣間見えるような気がしてくる。農民たちが力を合わせ、厳しい自然や環境と折り合っていくための祈り。そうして培われていった、大蛇を退治した大百足のようなたくましさ、不屈の精神。あらためて、「わらじまつり物語」は、この地で連綿と語り継がれてきた話であるようにも思えたのだ。

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大わらじは竹と藁でできていて、編むのは地元「御山敬心会」のメンバー。地元のおじいちゃん十数名が1週間から10日かけて制作する。わらじを鉄塔の上で吊り上げるには経験と技術を要するが、職人が高齢となったため、若者に伝授し、役目を委ねた。今は鉄塔だが、1975(昭和50)年まではこの場所にあった巨大な松に大わらじが吊されていた。真っ直ぐ伸びた見事な木は、その前にあった神楽殿もろとも、昼間の火事で焼け落ちた。さまざまな変化がある