アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#22
2014.10

スローとローカル これからのファッション

前編 つなぎ手、伝え手の立場から

ファッションは転換期を迎えている。それを牽引しているのは、ファストファッションといわれる安価な衣料品ブランドだ。彼らはグローバルなレベルで安く大量に洋服を生産・供給して広く支持されているが、そのせいでファッションの消耗品化も急速に進んでいる。

その影響は服づくりの現場にも波及している。生産拠点が海外に移されて、国内の素材産業、工場、デザイナーを取り巻く状況はますます厳しくなった。中小のつくり手たちは激化する価格競争に悲鳴を上げている。
一方で、それに対抗するような動きが各地ではじまっている。エコロジー、リメイク、オーガニック、エシカル(*)などのキーワードのもとに、服づくりを自分たちの手に取り戻そうとする意識も高まってきた。
なかには、パリ、ニューヨーク、東京などの大都市ではなく、自分たちの住む地域で服をつくるひとたち、ローカルのファッションに注目する若い世代も少しずつ増えてきている。衰退する地場産業に飛び込んでいく若者、アパレルの常識にとらわれない服のつくり手も現れている。
わたしはこの数年間、ファストファッションとは異なる方向性を模索する動き、スローファッションに興味を持って見つめてきた。スローファッションとは大量生産・大量消費型アパレルに対抗する、あるいは補完するような服づくりのことを指す。
こうした流れはまだ小川のようなものかもしれない。そのうちに大河となっていくのかもしれないし、先細って枯れていくのかもしれない。実際、世の多数はファストへと流れている。しかし、グローバル化の奔流が押し寄せている今、スローファッションはこれからの服づくりの方向を考えるにあたって、きわめて重要な意味をもつと私には思われる。
日本のファッションはこれからどこにいくのだろう……。
それを知るためにも、ローカルなファッションにかかわっている若い世代を訪ねて、話を聞くことにした。彼らはアパレルの主流から距離を置いて、独自の考えから活動しているひとたちだ。なぜローカルなのか。そこにどんな可能性があるのか。何が問題なのか。低迷している産地は再生するのか。彼らの声から、日本のファッションの一面を浮かび上がらせてみたい。
前編では、地方の服づくりの現状をよく知る3人に話を聞いてみた。ファッションビル・渋谷パルコで地方発ファッションなどを扱うセレクトショップ「ミツカルストア」を企画・運営する平松有吾。各地の繊維産地を訪ね歩いて、地場のものづくりを東京に紹介する活動を続け、さらには産地と若いつくり手たちとのネットワークをはかる場所「セコリ荘」を立ち上げた宮浦晋哉。京都の老舗和装メーカーでありながら、伝統の枠を越えて、新しいファッションプロジェクトに挑戦する伊豆蔵直人。いずれもまだ若いが、ファッションの現状を新しく変えていこうとする強い意欲の持ち主たちだ。
地方発ファッションとはどのようなものか、さっそく見ていくことにしよう。

(*)エシカル……もとの意味は倫理的だが最近は社会的関心を重視する、という意味合いで使われることが多い。

渋谷パルコ「ミツカルストア」

渋谷パルコ「ミツカルストア」