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#162

地域芸術祭の「接点」に立って
― ウォン・チャンホワ(ケルビン)

(2026.05.10公開)

京都府亀岡市文化芸術課のアートマネージャーであり、「かめおか霧の芸術祭」(以下、霧芸)のプロジェクトコーディネーターであるウォン・チャンホワ(ケルビン)さん。ケルビンさんは、地域芸術祭の現場で「アートと行政」「アーティストと市民」「展覧会とマルシェ」といった、芸術祭のもとにありながら立場の異なるもの同士の「接点」に立つ人だ。と同時に、芸術祭に参加する一人のアーティストでもあり、亀岡の歴史や風土のリサーチと日常の観察から生まれる参加型の作品制作を行っている。
立ち上がりから9年目を迎える霧芸では今、日常と芸術はどのように出会い、循環しているのだろう。今回はケルビンさんに、「行政の職員」として「一人のアーティスト」として、その接点から霧芸の今を伺ってみよう。

ウォン・チャンホワ(ケルビン)さん(右) - まちの石描きハンコ団―石の日ハンコワークショップ ウォン・チャンホワ + フォック・チン 2025 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025 関連イベント

ウォン・チャンホワ(ケルビン)さん(右)

まちの石描きハンコ団―石の日ハンコワークショップ
ウォン・チャンホワ + フォック・チン
2025
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025 関連イベント

———ケルビンさんは、亀岡市文化芸術課のアートマネージャーであり、「かめおか霧の芸術祭」のプロジェクトコーディネーターです。それぞれどのような役割なのでしょうか。

文化芸術課でのアートマネージャーとしての役割は、霧芸を回すための予算や、イベントを企画する際の事務的な制約の調整がまずは一つ。また、私自身が市役所の職員でありアーティストでもあるので、行政とアーティストとの間に入ることは大事な役割だと感じています。アーティストの感性がなかなか行政側に伝わらないとき、その接点を取り持ちます。また、霧芸以外にも、亀岡市民の文化芸術活動の支援・後援や、京都芸術大学と連携した廃校活用プロジェクトも始まるので、リサーチから関わっています。
霧芸のプロジェクトコーディネーターとしては、各プロジェクトの進捗管理と異なるプロジェクト同士のくし刺し役ですね。異なったプロジェクト間に新しい関係性が生まれるときに、特にやりがいを感じます。
霧芸の事務局は亀岡市文化芸術課の中にあって、アーティストと行政が直接、共に事業の方向性を考え、単に芸術分野だけではなく、環境や教育、福祉、農林などの市内部署と連携を取りながら進んでいきます。運営は外部のアートプロデュース会社に委託する芸術祭も多い、実は霧芸は特殊なことをしていると言えます。

「かめおか霧の芸術祭」 芸術作品をつくる人だけではなく、生命(いのち)を輝かせる技術をもつ人を「芸術家」と捉え、非日常としてではなく、日常を祭る「芸術日常」を理念に掲げる芸術祭。展覧会や公開講座、ワークショップ、マルシェなどの様々なプロジェクトを通して、地域社会に暮らす人々の、日々の営みの中にある芸術的要素を拾い上げ、共有していく

かめおか霧の芸術祭

芸術作品をつくる人だけではなく、生命(いのち)を輝かせる技術をもつ人を「芸術家」と捉え、非日常としてではなく、日常を祭る「芸術日常」を理念に掲げる芸術祭。展覧会や公開講座、ワークショップ、マルシェなどの様々なプロジェクトを通して、地域社会に暮らす人々の日々の営みの中にある芸術的要素を拾い上げ、共有していく

———ケルビンさんは元々、香港の大学でプロダクトデザインを専攻されていましたが、どのような経緯で日本の地域芸術祭に関わることになったのでしょう。

2018年に新潟県で開催された「大地の芸術祭」のボランティア募集の情報を見かけ、初めて芸術祭に出会いました。当時、香港では芸術祭はなく、芸術が美術館を飛び越えて、地域でいろいろなものや人をつなげていることに感心しました。2019年には「瀬戸内国際芸術祭」にアートチームとして出展したり、日本の地域芸術祭・アートプロジェクトを研究していました。
より学びを深めたいと思い、2022年に京都芸術大学大学院の文化創生領域に入学し、霧芸の総合プロデューサーでもある松井利夫先生のもとで、様々な日本の地域の芸術祭をリサーチしながら、作品制作をしました。卒業後、松井先生からご紹介をいただいて現職につき、今に至ります。

「開かれたアトリエ」 京都芸術大学空間デザイン学科と連携し、亀岡市役所の地下スペースを子供からお年寄りまで利用できる開かれた空間に更新。食堂、コワーキングスペース、イベントスペースのほか、企画展が行われる展示スペース、亀岡市立図書館と連携した図書コーナー、巡り堂による「かめおか画材循環コーナー」も

「開かれたアトリエ」

京都芸術大学空間デザイン学科と連携し、亀岡市役所の地下スペースを子供からお年寄りまで利用できる開かれた空間に更新。食堂、コワーキングスペース、イベントスペースのほか、企画展が行われる展示スペース、亀岡市立図書館と連携した図書コーナー、巡り堂による「かめおか画材循環コーナー」も

開かれたアトリエ展覧会Vol.1 「みんなでつくる紙芝居展」with亀岡市環境政策課 2025年8月19日〜9月30日 – 亀岡の自然豊かな風景や生き物たちを大切に思う気持ちを育むために、市民と一緒に保津川を舞台にした生き物たちの物語を考え、「紙芝居」に仕上げる企画の成果発表展

開かれたアトリエ展覧会
「みんなでつくる紙芝居展」with亀岡市環境政策課
2025年8月19日〜9月30日

亀岡の自然豊かな風景や生き物たちを大切に思う気持ちを育むために、市民と一緒に保津川を舞台にした生き物たちの物語を考え、「紙芝居」に仕上げる企画の成果発表展

———芸術祭という言葉の印象から、どうしても「数年に一回、亀岡の町中にアートが展示されるお祭り」とイメージされてしまうと思います。どのように実態を伝えているのですか。

「かめおか霧の芸術祭」の英語表記は、「Kameoka KIRI Art Cultivation」です。一般的に使われるFestival(祝祭)ではなく、Cultivation(耕作)なんです。これは松井先生の言葉を借りてはいますが、数年に一回の非日常としての祝祭ではなく、日常生活の中で、毎日コツコツと「生活を耕していく芸術祭」であるといつも説明しています。年間を通して多様なプロジェクトと側面があり、一人ひとりの暮らしに寄り添える豊かさは、霧芸のもつ魅力です。

「ボンボンマルシェ」 - 亀岡市内のヒト・モノ・食の「循環」をコンセプトに、地域に新たな価値を生み出すマルシェ。2025年度は亀岡市役所と城跡芸術展の2会場で実施。亀岡の味覚を味わえるフードマーケット、里の手仕事に触れるクラフトマーケット、アップサイクルをテーマにしたワークショップなど、数多くの出店、体験企画で賑わう

「ボンボンマルシェ」

亀岡市内のヒト・モノ・食の「循環」をコンセプトに、地域に新たな価値を生み出すマルシェ。2025年度は亀岡市役所と城跡芸術展の2会場で実施。亀岡の味覚を味わえるフードマーケット、里の手仕事に触れるクラフトマーケット、アップサイクルをテーマにしたワークショップなど、数多くの出店、体験企画で賑わう

実態と価値をいかに伝えていくかは、霧芸だけではなく、多くの小中規模の芸術祭の課題だと思います。霧芸も最初の3、4年は市民や議員の皆さんから「霧のように実態を掴みにくい」と言われていたんです。霧芸は今年で9年を迎えたのですが、これまでの継続によって、その状況は少しずつ晴れてきたように思えます。市民の皆さんがどんどんサポーターとして協力してくれたり、亀岡に移住するアーティストも増えてきている状況です。毎年、霧芸で何が行われているかを記録したアーカイブブックの効果も大きいと感じています。

「城跡(しろあと)芸術展」 丹波亀山城跡周縁を舞台に開催される、年に一度の「芸術の祭り」。城跡に刻まれた時間、土地の物語を受けとめ、 新たなかたちで未来へと手渡していく。亀岡にゆかりのある作家による絵画、彫刻、陶芸、漆造形、インスタレーションといった幅広い展示作品に加え、トーク、ワークショップ、マルシェなどの関連企画も充実。ケルビンさんも出展作家として、2022年度、2023年度、2025年度に参加

「城跡(しろあと)芸術展」

丹波亀山城跡(大本本部)周縁を舞台に開催される、年に一度の「芸術の祭り」。城跡に刻まれた時間、土地の物語を受けとめ、 新たなかたちで未来へと手渡していく。亀岡にゆかりのある作家による絵画、彫刻、陶芸、漆造形、インスタレーションといった幅広い展示作品に加え、トーク、ワークショップ、マルシェなどの関連企画も充実。ケルビンさんも出展作家として、2022年度、2023年度、2025年度に参加

———これまでで、特に印象的なプロジェクトを教えてください。

2025年度、特にメインで関わっていたのが、霧芸の主要プログラムでもある「城跡(しろあと)芸術展」です。「城跡芸術展 2025」のディレクターである副産物産展の矢津吉隆さんと山田毅(つよし)さんのもと、出展作家と一緒に展示場所を選定し、会場の全体構成から携わりました。
実は「城跡芸術展」の立ち上げの時点では、霧芸で芸術展をする意味について、メンバー間で様々な意見があったそうです。日常の中に様々なプログラムが集まる霧芸の特色が薄れて、芸術展が中心になってしまうのではないかと。

《Balance and Fixation》 副産物産店 2025 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025

《Balance and Fixation》
副産物産店
2025
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025

《Nomadic Memories―風土をめぐる記憶―》 日置結弥 2025 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025

《Nomadic Memories―風土をめぐる記憶―》
日置結弥
2025
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025

———芸術祭らしいプロジェクトであるからこそ、そうした危惧が出てくるのも分かりますね。

ただ、「城跡芸術展」の特徴は、出展アーティストがみな亀岡に制作拠点を持っている、あるいはゆかりがあることです。なので、この芸術展は亀岡のアーティストによる展覧会であると同時に、亀岡の市民による、日常の延長にある展覧会とも言えます。テーマ設定がないことも特徴で、出展作に新作・旧作の縛りもありません。亀岡に親しみを持つアーティストが、日常で感じ取ったものをありのまま表現した芸術展です。
朝、私が出勤していると、作家の皆さんが道で声をかけてくれることも多いのですが、参加作家とコーディネーターとしての関係を離れて、日常の中で彼らと挨拶を交わすときが私は本当に嬉しいんです。
「今年もやるの?」と声をかけてもらうことも多く、毎年の集いの場として、アーティスト、市民の双方から開催を期待される芸術展に育ってきた実感があります。

《美しき問い –beautiful question–》 大矢一成 2024 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2024

《美しき問い –beautiful question–》
大矢一成
2024
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2024

《風になるとき 2024》 西野康造 2024 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2024

《風になるとき 2024》
西野康造
2024
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2024

また、改めて市民サポーターの皆さんの存在の大きさを感じています。最初は十数名だったのですが、2025年度は40名近くになりました。去年サポーターをしてくださった方が、新しい友達を連れてきてくれたりと、サポーターのコミュニティも形成されています。「城跡芸術展」に参加してくれたみなさんが、霧芸の他のプロジェクト、例えば「KIRI FARM」のメンバーになってくれたり、そして「KIRI FARM」で出会ったメンバーたちが、次の年の「城跡芸術展」のサポーターになってくれたりと、異なるプロジェクト間に循環が生まれてきています。

「城跡芸術展 2025」市民サポーターの皆さんと

「城跡芸術展 2025」市民サポーターの皆さんと

「KIRI FARM」 土の上で手を動かすことを共にしながら、 自然とひとのつながりが育まれる場所。2025年度は約30回 、延べ約150人以上が参加 。不耕起栽培を主軸に、畝立てや土づくり、種まき、苗づくりなどを始め、15種類以上の野菜と、 10種類以上のハーブを育てる

「KIRI FARM」

土の上で手を動かすことを共にしながら、 自然とひとのつながりが育まれる場所。2025年度は約30回 、延べ約150人以上が参加 。不耕起栽培を主軸に、畝立てや土づくり、種まき、苗づくりなどを始め、15種類以上の野菜と、 10種類以上のハーブを育てる

———異なるプロジェクト間の人の循環は、とても霧芸らしさを感じるエピソードですね。では、ここからはアーティストとしてのケルビンさんについて伺っていきます。「城跡芸術展 2025」では、《まちの石描きハンコ団》を出品されていました。

これまで、アーティストのフォック・チンさんとの共同制作で作品を発表してきました。私たちの制作では、何かを表現したいという気持ちより、仕事やリサーチを通して発見した、その土地の歴史、風土、日常の営みからアートの視点を引き出して、より多くの人がアートと出会い交流できる場をつくりたいと考えます。特定のメディアをもたず、領域横断的に、参加者を巻き込んでつくっています。

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《まちの石描きハンコ団》 ウォン・チャンホワ + フォック・チン 2025 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025

《まちの石描きハンコ団》
ウォン・チャンホワ + フォック・チン
2025
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025

《まちの石描きハンコ団》は、「城跡芸術」を担当するにあたって始めた城跡のリサーチから生まれた作品です。城跡の「城」とはかつての「亀山城」のことですが、亀山城の石垣には、天災や破却によって幾度も崩れ、そのたびに民衆の手で積みなおされてきた「解体と再生」の歴史がありました。町のあちこちから石を使って積み直されてきた石垣は、亀岡の歴史の痕跡ではないか、と考えました。

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まちの石描きハンコ団―石の日ハンコワークショップ ウォン・チャンホワ + フォック・チン 2025 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025 関連イベント

まちの石描きハンコ団―石の日ハンコワークショップ
ウォン・チャンホワ + フォック・チン
2025
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025 関連イベント

この作品はワークショップから始まっています。まずは30名ほどの参加者の皆さんと一緒に城跡の歴史を振り返り、まち歩きをしました。その途中でみんなで気になった石を写真に撮ったり、スケッチをしたり、拓本(紙を対象に当て鉛筆などで擦ることで凹凸を転写する技法)で記録して、石のかたちのゴムはんこを彫りました。
展示会場では、ワークショップの参加者と作家自身の彫ったハンコが並び、来場者はそれらを自由に手に取って紙の上に押すことができます。絵巻の上に新しい石垣が積まれていきました。

《まちの石描きハンコ団》 ウォン・チャンホワ + フォック・チン 2025 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025

《まちの石描きハンコ団》
ウォン・チャンホワ + フォック・チン
2025
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2025

———土地の歴史・風土と、今を生きる人々の手が重なり合うような素敵な作品ですね。「城跡芸術展」には、京都芸術大学の大学院時代から参加されていますね。大学院での学びはどうでしたか。

私が所属していた文化創生領域では、教室の中で完結する講義だけではなくて、いろんなアートプロジェクトの現場に足を運びました。 松井利夫先生からの、「論文や制作よりも、学生でいられる大切な時間を使っていろんな場所に行ってください」という言葉はとても印象に残っていますね。大分の「BEPPU PROJECT」、青森の八戸ポータルミュージアム、秋田の文化創造館をリサーチしたり五目朝市に出したりと、京都を超えて様々な地域の文化を実感できたことは、今の自分をつくってくれた大きな学びでした。

文化創生領域のゼミ生たちで秋田の五城目朝市に出店

文化創生領域のゼミ生たちで秋田の五城目朝市に出店

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画像17、18 《霧の種蒔き祭りー共に霧をまくプロジェクト》 ウォン・チャンホワ + フォック・チン 2023 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2023

《霧の種蒔き祭りー共に霧をまくプロジェクト》
ウォン・チャンホワ + フォック・チン
2023
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2023

———《霧の種蒔き祭り共に霧をまくプロジェクト》は「城跡芸術 2023」の出展作品であり、大学院の修了制作でもあります。ケルビンさんと霧芸の象徴的な「接点」となる作品ですよね。

本作では、亀岡を象徴する「霧」に着目しました。竜ヶ尾山にある「霧のテラス」が知られている通り、霧は亀岡の観光資源ですし、馴染みのない方には魅力的だと思うのですが、亀岡市民の霧に対するイメージは正直よくありません。服も髪も濡れて不便で運転もしづらい、といった感じです。一方で、亀岡の野菜が美味しいのは霧の中で育つからとも言われていて、草木と同じように、亀岡で暮らす誰もが、霧という大地の循環を身体に取り込みながら生きています。この作品では、亀岡市民の皆さんが、亀岡の自然の循環を象徴する霧の美しさに再び気づき、自然と自分の間の循環を体感できないだろうか、という思いから始まりました。

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《霧の種蒔き祭りー共に霧をまくプロジェクト》 ウォン・チャンホワ + フォック・チン 2023 かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2023

《霧の種蒔き祭りー共に霧をまくプロジェクト》
ウォン・チャンホワ + フォック・チン
2023
かめおか霧の芸術祭・城跡芸術展 2023

展示エリアのひとつでもある大本花明山(おおもとかめやま)植物園周辺の霧を冷却して集めた「霧の水」を用いて、園の植物に霧(水)をまくことができます。霧(水)をまく行為を通して、霧と水の関係、水と植物の関係を考えながら、大地の循環に参加できる仕組みをつくりました。
作品に参加いただいた皆さんから、石や霧といった日常で見慣れたものを改めて発見するような感覚で見ることができた、とコメントをいただいたときはすごく嬉しかったですね。

台湾の基隆で開催された「2025 永晝海濱美術館雙年展-水啦WATER LIVES HERE」における日台対談イベント「台日講座X創生對談:一場來自港邊的對話」に参加。 霧芸の総合プロデューサー・松井利夫先生(後列左から2番目)とケルビンさん(前列左)

台湾の基隆で開催された「2025 永晝海濱美術館雙年展-水啦WATER LIVES HERE」における日台対談イベント「台日講座X創生對談:一場來自港邊的對話」に参加。
霧芸の総合プロデューサー・松井利夫先生(後列左から2番目)と共に

———「行政の職員」として「1人のアーティスト」として、立場が違うもの同士の「接点」を体現されているケルビンさんだからこそ、霧芸における多様な接点と、循環を取り持つことができるのだと思いました。ケルビンさんの今後のビジョンを教えてください。

そうですね、行政とアート、アーティストと市民、異なったプロジェクトのメンバー同士の接点を取り持つことが、今の私の一番のやりがいです。
地域芸術祭は10年続いてスタートラインだと言われます。霧芸は現在、まだ年目、赤ちゃんなんです。まずは10年を見ながら、単なるアートプロジェクトとしてではなく、亀岡の町全体の基盤として、様々な部署や人の接点となる芸術祭を目指していきます。
亀岡市も海外との交流が少しずつ活発になってきて、昨年も中国と台湾で霧芸のプロジェクトをもつことができました。今年、台湾のアーティストを招待して、大きな作品をつくる予定もあるので、私も言語の能力を生かしながらサポートをしていきたいです。また、一人のアーティストとしても、亀岡や日本にとどまらずたくさんのプロジェクトを体験し学びながら、新しい制作に生かしていければと考えています。

取材・文 辻 諒平
2026.04.07 オンライン通話にてインタビュー

プロフィール写真

ウォン・チャンホワ(ケルビン)

香港生まれ、京都市在住。亀岡市生涯学習部文化芸術課アートマネージャー、「かめおか霧の芸術祭」プロジェクトコーディネーター。
2024
年、京都芸術大学大学院文化創生領域地域文化デザイン分野修了(現:京都芸術大学大学院文化デザイン・芸術教育領域)。多様な地域芸術祭やアートプロジェクトのリサーチおよび実践に関わりながら、多くの人々と協働して活動を行っている。「瀬戸内国際芸術 2019」への出展をきっかけに、領域横断の媒介と展示手法を用い、日常の営みの中にアートを見出し、人々が芸術に出会う場をつくっている。

Instagram: @kelv_o_i_d_n
Website: https://kelvinwongchungwah.myportfolio.com/home


ライター|辻 諒平(つじ・りょうへい)

アネモメトリ編集員・ライター。美術展の広報物や図録の編集・デザインも行う。主な仕事に「公開制作66 高山陽介」(府中市美術館)、写真集『江成常夫コレクションVol.6 原爆 ヒロシマ・ナガサキ』(相模原市民ギャラリー)、「コスモ・カオス–混沌と秩序 現代ブラジル写真の新たな展開」(女子美アートミュージアム)など。