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アネモメトリ -風の手帖-

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#86

白水の滝と白水ダム
― 大分県竹田市

猛暑。どこに行っても、何をしても汗だくになってしまう毎日です。つかの間のを求めて、美しい水の風景に会いに行ってきました。
大分県竹田市萩町。道路は舗装されているものの、ほとんど人陰のない山道を1時間、ひたすら進んでいきます。車窓から差し込む日差しに体力が奪われぐったりしていると、目に飛び込んでくる緑色の絨毯、2030cm程にシャキンと背筋を伸ばした田んぼの苗たちが清々しさを与えてくれます。
ひとつ目の目的地、白水(しらみず)の滝近くキャンプ場になっていて、バーベキューをしている家族や川のほとりでヤマメ釣りをしている人もいます。川沿いを上に上にと歩いて行くと、最初に母滝が出迎えてくれます。優しい水しぶき、このマイナスイオンで訪れる人の心はス~と癒されます。さらに奥に進むと、水の落ちる音がだんだん大きく聞こえ始めます。ひとがひとり通れるくらいの細い道の先、最後のカーブを曲がると迫力満点の滝が待ち構えています。目の前に滝つぼがある異空間と、叩き付ける水しぶきの音で、すっかり日常を忘れてしまいます。心が洗われた帰り道、茶店で食べる囲炉裏で焼かれたヤマメは美味しくてたまりません。
この滝から10km程移動したところに、白水ダムがあります。ここはとても静かで、ひとの気配もない山の中に埋もれた場所です。そこに突如として現れる人工的な水のアートは、まるで白くて大きな壇上のカーテンのように見えます。ここの水のせせらぎは柔らかく優しい音色です。誰かが側で演奏しているようなさわやかな音楽のようです
同じ川沿いにある白水の滝と白水ダム。自然のパワーがみなぎった滝の勢い強さの美と、ひとの綿密な計算の上で刻まれた水のリズムの美はつながっています。そしてどちらも美しい。あぁ、わたしの耳に流れてきたこの水の音、もっとうまく伝えられればいいのに。あぁ、わたしの部屋はやっぱり暑すぎます。

(出口聡子)

白水の滝

白水の滝

白水ダム

白水ダム