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#317

ニューツーリズムとしての「KYOTOGRAPHIE」を考える
― 京都府京都市

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は毎年、4月から5月にかけて行われる写真に特化したアートイベントです。筆者は東京在住ですが、ここ数年、恒例行事のように「KYOTOGRAPHIE」に足を運んでいます。普段は公開されていない町家や寺社、地下空間や商店街の中なども使った展示は、ホワイトキューブとは違うインスピレーションに溢れていて驚かされます。それは多様な歴史のレイヤーがある京都だからこその旅。京都で現代アートに触れる旅をニューツーリズム(従来型の観光ではなく、地域ならではの文化や暮らしを体験する新しい旅のかたち)と捉え、その魅力をお伝えしたいと思います。

「KYOTOGRAPHIE 2026」のメイン会場の一つ、重信会館屋上。赤い展望鏡は作品。この場所に入れるのは、これが最後という気がした

「KYOTOGRAPHIE 2026」のメイン会場の一つ、重信会館。1930年建設、真宗教学の研鑽拠点として使われ、のちに大谷大学の学生寮としても活用。2001年の閉鎖後も、イベント会場として公開される機会がある。写真は屋上からの景色。赤い展望鏡は作品。この場所に入れるのは、これが最後という気がした

重信会館内部。使われていた当時に貼られたポスターもそのまま

重信会館内部。当時のポスターもそのまま

「KYOTOGRAPHIE」の特色には、やはり京都らしい空間を再解釈する展示会場が挙げられるでしょう。空間が内包する時間がいかに作品と共存、共鳴するのかも興味深く、より身体感覚が研ぎ澄まされる実感があります。そして、展示会場外、出展作品以外にも見るべきものがたくさん。地図を手に、徒歩で、あるいはバスで次の会場に向かう道すがらにある祠、路地裏の木造の商家や町家には、過去から今まで、途切れることなく繋がる歴史を感じます。

インフォメーションがあった八竹庵(旧川崎家住宅)は大正時代に建てられた和洋折衷の豪華な町屋。京都市有形文化財でもある

インフォメーション町屋の八竹庵(はちくあん/旧川崎家住宅)は大正時代に建てられた和洋折衷の豪華な町屋。京都市有形文化財でもある

展示会場の一つ、誉田屋源兵衛 竹院の間入り口。誉田屋源兵衛の創業は江戸時代元文年間まで遡る。現在の場所に社屋を構えたのは大正時代、以来百年以上続く帯匠

展示会場の一つ、誉田屋源兵衛(こんだやげんべい)は江戸時代元文年間創業の帯匠。現在の場所に社屋を構えたのは大正時代、以来100年以上続く

近代以降、関東大震災、第二次世界大戦時の大規模な空襲により、東京は壊滅的破壊を経験しました。それにより過去との繋がりを感じることが物理的に難しく、更に言えばスクラップアンドビルドのスピードは年々加速し、記憶を上書きし、町の歴史を消していきます。
京都もまた、歴史上何度も大火や戦火に見舞われてきましたが、そのつど町衆の手によって建て直されてきました。近代においては、第二次世界大戦時の空襲を免れたことで、今なお古き良き面影を十分に残し、まちの時間と記憶が現代の日常に繋がっています。だからこそ、内外からの観光客を集め、世界でも有数の観光地であり続けることができるのでしょう。

2026年 西陣にある真教寺(しんきょうじ)の山門。山門のすぐ右隣にある木造の小祠には、大日如来が祀られている

西陣にある真教寺の山門。山門のすぐ右隣にある木造の小祠には、大日如来が祀られている

オーバーツーリズムで消費される名所旧跡の京都ではなく、今現在の町の日常の中に展示される作品を空間と共に味わう旅は、名所旧跡めぐりとはまた違う学びがあります。故に私は、「KYOTOGRAPHIE」を写真やアートのみならず、京都の日常を体験するニューツーリズムとして考えたいのです。
次の開催は2027年の春、現代アートとまちの歴史が重なり紡ぐ物語を体感してみませんか。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭
https://www.kyotographie.jp/

(原 順子)