アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#83
2020.04

自分でつくる公共 グランドレベル=1階の試み

3 点から面へ、回遊できるまちのつくられかた 東京・森下、浜町
5)レコードコンビニの夜 お酒片手に、和気あいあいと

喫茶ランドリーのスタッフのように、リズムアンドベタープレスから夜のレコードコンビニに移動した。
昼間は老若男女が買い物に訪れるふつうのコンビニだったのに、夜はガラッと雰囲気が変わっていて驚いた。買い物客に混じってイートインスペースでくつろぐひと、進藤さんと話したいひとが次々と訪れ、コンビニというよりはライブハウスや飲み屋のようだ。ひとつには、店の中と外にあるイートインスペースでお酒が飲めることも大きいだろう。かつて、酒屋だったころは角打ちだったが、カフェのようなしつらえにしたことで、角打ちほど内輪感が出すぎず、常連も一見の客も、お互い気にせず交じり合う。東京で、こういった場が成立するのも珍しいことだろう。

進藤さんと親しげに話し出した2人がいた。彼らは編集デザイナーで、たまたま通りがかりにこの店を知った。レコードコレクターということで進藤さんとも趣味が合い、通ってくるように。2019年にカップ酒をテーマにした本を出版したときは、2人の発案でレコードコンビニと裏のローリンカフェを使って、出版イベントを催した。ライブや歌謡曲DJを入れた大がかりなものだったが、出演者の交渉はすべて進藤さんが仕切ってくれた。イベントは大盛況で、100人以上が集まったという。

ゲストを呼んだり、ひとが多く集まるイベントを仕切るには、かなりのエネルギーが要る。でも、進藤さんはやるなら面白く、というひとだ。「ただの飲み会になってはつまらない。面白そうな引きのある企画なら、ひとは絶対に集まる」と、とことんやりきる。気持ちの入ったイベントは、来るひとにも大きな楽しみとなる。そうしてまた、レコードコンビニのファンが増えていく。

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イートインでオンザロックを片手に、店外で缶コーヒーを飲むなど、楽しみかたもさまざま。イートインはかつての雑貨コーナー、店外は雑誌コーナーで、ともに悩みの種だったが、それも解消された / 上から4枚目の2人が『日本厳選カップ酒 I LOVE CUP SAKE』の著者。イベントの際は全国から150種ものカップ酒を集めた