アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#13
2014.01

暮らしのなかの「うつくしいかたち」

後編 結びあい、育ちゆく芸術と手しごと
7)終わりに
高松・栗林公園の箱松。美しく手入れされていて、讃岐文化の奥行きを感じさせる

高松・栗林公園の箱松。美しく手入れされていて、讃岐文化の奥行きを感じさせる

前編後編で2回にわたって特集してきた、四国・香川の旅。21世紀になって始まった「瀬戸内国際芸術祭」や少しさかのぼって90年代にオープンした丸亀の猪熊弦一郎現代美術館によって、われわれ遠方の者は香川、高松を認識するようになったのかもしれないが、実際、あらためてこの期に街を歩いてみると、戦後直後から丹下健三、イサム・ノグチ、ジョージ・ナカシマら、「外」からの先進的なクリエーターたちをひきつけてきた土地柄であることがわかった。そもそも、民具連結成のきっかけとなった流政之もまたこの地の出身者ではない。そして、いままた皆川明や中村好文ら現代のデザインやものづくりシーンのキーパーソンがこの地に、そしてこの地でものをつくるひとたちにアプローチしている。高松は、戦後いちはやく先人達が蒔いた「デザイン」と「工芸」をつなぐ種をうまく育て、「ヨソモノ」の英知を柔軟に吸収して、ほかにない個性をつくりだしてきたのである。
もともとの「手しごと」にあった匿名性や集団制作というありようが、「工芸」や「クラフト」という今日的な枠組みを超えてのコラボレーションに誘っているのかもしれない。その傾向は、瀬戸内国際芸術祭などに見られる「美術」にも確実にあらわれている。
先日、「瀬戸内生活工芸祭2014」の開催日が公表された。2014年9月20日と21日とのこと。初回を見逃してしまったけれど、ぜひこの第2回目に足を運びたい。3年に一度開かれる「芸術祭」と、この「工芸祭」。しばらく、夏の高松詣でが続きそうだ。

桜製作所/ジョージ ナカシマ記念館
〒761-0122 香川県高松市牟礼町大町1132-1
TEL087-870-1020
10:00~17:00(入場は16:30まで)/ 祝祭日、年末年始休(夏期休暇もあり)
入館料 一般500円、小中学生200円
http://www.sakurashop.co.jp/nakashima/

瀬戸内生活工芸祭2014
開催:2014年9月20日(土)、21日(日)
会場:高松市玉藻公園、女木島
http://kougeisai.com/info/
*2014年2月、3月で出展者募集の予定。詳しくはサイトを参照。

文:林洋子(はやし・ようこ)
京都造形芸術大学准教授。東京都現代美術館学芸員を経て現職。専門は美術史、美術評論。おもな著書に『藤田嗣治 作品をひらく』(名古屋大学出版会、2008)、『藤田嗣治 手しごとの家』(集英社新書、2009)、『藤田嗣治 本のしごと』(同、2011)、編著に『近現代の芸術史 造形篇I』『同II』(芸術学舎・幻冬舎、2013)などがある。近年の企画展に『藤田嗣治と愛書都市パリ』(渋谷区立松濤美術館ほか、2012)ほか。

写真:大西正一 Masakazu Onishi
1980年生まれ。京都市在住。 写真家 / グラフィック・デザイナー。2006年、アカンサスタイポグラフィスクール第一期生 修了。2010年、デザイナーの鈴木篤、木工・家具デザイナーの竹内秀典と共にデザイン・プロジェクト「rabbit hole」を立ち上げる。http://www.rabbithole-d.com/