3)みんなで決める、ならではの味
下ごしらえも落ち着きはじめ、味つけの工程に入ると、そこからは共同作業。みんなで試食しながら味を確かめて決める。鍋をリレーしながら少しずつつまみ、おしゃべりする口と、テキパキ調理する手と、味見をする口と、みんなひとりで何役もこなす。
「しょっぺえ!」
「うそ、1,500の3%だがら、45グラムだべ? ちがうかあ?」
「4.5gでいいよ」
「うそお」
「それじゃあ0.3%になる?」
「でもこれじゃあしょっぺえ」
調理も終盤に差し掛かった頃、山菜のミズをつかった一品「ミズの水物」の塩加減が決まらない。みんな一旦手を止めて意見を交わす。この場に年功序列はなく、あっちゃにも意見を聞きながら「あかつきの会らしい味」をいま一度すり合わせてゆく。それは、ただ美味しい味を目指すものではなく、もちろんメンバーが家でつくる味でもない。日毎に変化していく、旬で新鮮な素材の味を感じながら、良い加減のところを探して、みんなで決める。料理長がいるわけではないので、台所のみんなが納得した味が、今日の「あかつきの味」になる。
「私たちもレシピの本を見ればいいんかもわからないけど、毎年毎年やってることなんで、覚えたふりして(笑)。ミズのつゆは、出汁昆布も入ったことで、塩分多いってことはないけども、味見したらしょっぱかったんだ」
「(笑)とんでもなくしょっぱくて」
「そうそう、それでつくり直しっていう」
「1年ぶりにつくるものとかって、あれこれどうでっか?ってものもあるんでね。だよね? 高野豆腐入れねばなのに、油揚げ入れたり」
「あっ、それはわたし!」
「(隣で見てて)あれ、これなんか違うでねえか? って。ああ、油揚げでない、高野豆腐だ!って」
(一同大笑い)
「ぼそぼそと料理やってたら美味しくなくなるでしょう。『笑いが調味料』って会長からずっと言われてるからさ。本当は、私たち静かなんだけども」と副会長の森山千恵子さん。「そう、お淑やかばっかしだげどね」とメンバーが続いて、一同大笑い。「笑いが調味料」ならば、この台所はうまみ満載だ。会長の工藤さんは、「いまでは、ネットで検索をすればレシピが見られてつくれる。けれど、かあさんの気持ちを入れたものはつくれない」とも話す。