アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#119
2023.04

ゴミを「自分ごと」化する

1 ゴミ拾いをエンターテインメントに スポGOMIの実践
2)ゴミって何? 観察から始める

一見きれいな砂浜にゴミはあるのだろうか。はじめて参加するスポGOMIにすぐに馴染めるものだろうか。そんな心配をよそに、子どもたちはちぎれたビニール袋や、錆び付いた金属のかけら、潰れた缶など、潮に揉まれて原型を留めないゴミでもすぐに見つける。砂浜に目を凝らし、無数のガラスのかけらやマイクロプラスチックも見逃さない。「これは燃えますか、燃えませんか?」とトングで捕まえた何かを差し出され、聞かれた大人も一緒に考え込む場面もあった。同じ質問がたびたび出ていたのを見ると、ゴミの中身や正確な分別について、はじめて意識した子どもたちも多かったのかもしれない。

———事前授業の作戦タイムでは、茂みのところとか、人が見つけにくいところにゴミが落ちてるよ、とか、ゴミを捨てる人ってどんなところで捨てるんだろう、という想像力が大事ということはお話しました。

授業の成果か、林の茂みに捨てられた生ゴミを発見する子もいれば、海岸に落ちている吸殻を見つけて「ここで焚き火したのかな」と想像を巡らす子もいた。どのチームも、予想以上に膨らんだゴミ袋を抱えて帰って戻ってきた。最後は、再び全員集合して結果発表となる。ポイント制なので見た目だけでは結果がわからない緊張感も手伝って、上位のチームが呼ばれるたびにどよめきと歓声が入り混じった。
この日拾ったゴミの総量は、約30kg。平均するとひとり1kg以上のゴミを拾ったことになる。子どもたちの感想は「自分が参加しているビーチサッカーでもスポGOMIを取り入れたい」「スポGOMIワールドカップに参加してみたい」と前向きで、スポーツのもたらす達成感や人を鼓舞する力を改めて感じた。ゴミをターゲットと思えば、ゴミ拾いは楽しくなる。その感覚は、今回参加した子どもたちのなかにずっと残るだろう。馬見塚さんも、自身の経験を振り返る。

———ランニングしながらゴミ拾いを始めた最初の頃は汚いなと思っていたゴミが、だんだん「このお弁当の空き箱に箸が4本あるから2人で食べたんだな」とか、「あのコンビニで買ってお腹がすいてここで食べたんだろう」とか、想像すると面白くなってきたんです。僕らはよく「ゴミは幸せの抜け殻」っていってるんですけど、そこで誰かがお弁当を食べて満腹感味わって幸せだったはずなのに、その箱を置いていっただけでゴミになる。まちのゴミってだいたい大人が捨ててるんですよね。今日スポGOMIに参加した子どもたちも、実際にゴミを拾ってこんなにゴミが捨てられていることを知ったら、もうここでポイ捨てはしようとは思わなくなると思う。

スポGOMIに参加すると、しばらくの間は地面に落ちているものを集中して観察することになる。今回も、打ち上げられたサメを見つける子もいれば、忘れもののジャンパーを見つける子、さらに、落ちていた花をプラゴミのボトルに生けるという、能動的なことをする子もいた。汚いもの、と見ないふりをしているうちは見えていなかったゴミの中身に、自分の好きなものや誰かの生活の跡を発見し、自分との接点を見出す。その体験はゴミと向き合い、自分ごと化するきっかけになるに違いない。

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15 年続けてきた経験から、どんな場所にゴミが落ちているのかも分析されている。茂みなど⼈の⽬がつきづらい場所には、⽣ゴミなど⼀般家庭ゴミが捨てられていることが多い。どこを探せばより点数の⾼いゴミが⾒つかるかチームで話し合い、結果を出せることもスポ GOMI ならではの楽しみだ / スポGOMI終了後、小学校ではゴミを用いた作品づくりを行う授業が行われた。⼦どもたちが⽬を凝らしながら拾っていた⼩さな瓶や鉄くず、シーグラスもまた、⼈々の営みのなかから出たゴミであり、新たな視点をくれる素材でもある