子どもが育つ場をつくり、さまざまな試みを行う人たちが全国各地にいる。その場は同時に、子どもの親をはじめ、かかわる大人が育つ場でもある。子どもも大人も、そして場がある地域もともに育ち合う。そんな場づくりに挑戦する人たちがいる。
今回の特集では、アーティストや企画者など、表現にかかわる人々と彼らがひらいた場を取り上げる。それぞれがどのように考え、場をひらくに至ったのか。また、実際にどのような試みを行っているのか取材していく。
今号と次号では、福岡でユニークな試みを続けている「いふくまち保育園」と「ごしょがだに保育園」を始めた園長の酒井咲帆さんを紹介する。酒井さんは写真家で、カフェを併設したまちの写真館を手がけるアルバスの代表でもある。
酒井さんは1981年、兵庫県明石市出身。ビジュアルアートの専門学校で写真表現を学び、写真家としての活動をはじめる。2006〜09年に、子どもの居場所づくりを実践的に研究する九州大学のプロジェクトに参加したことをきっかけに、福岡に移住した。プロジェクトでまちづくりに興味を持った酒井さんは、写真家から保育園の園長へと独自のキャリアを歩んでいく。活動のなかで、一貫して大切にしてきたのが、「場をひらき、子どもや地域とかかわり続けていくこと」だという。どうして、酒井さんは、保育園を始めたのだろうか。