4)子どもと大人と、地域でつくる保育園
いふくまち保育園を見学したあと、3月にオープンしたばかりのごしょがだに保育園も案内してもらった。園までは徒歩数分で、目と鼻の先の距離にある。「いふくまち保育園と2園で一つと考えている」と酒井さんは説明する。ごしょがだに保育園には、0〜5歳児までの園児29人と、保育スタッフ15人がいる。ふたつの園は行き来でき、行事も一緒に行っている。
いふくまち保育園のスペースでは、4、5歳児にもなると、活発な子どもたちにはどうしても手狭になる。経営的に考えると、受け容れる子どもの年齢が高いほど一人当たりの助成金額が減り、園の収入は減ってしまう。だが、「就学するまでこの園で育てたい」「子どもたちが卒園しても帰って来られる場所をつくりたい」——そんな声が、保育者や関係者のあいだでしだいに高まっていった。そんなときに、公園管理を行うなかで知り合った地域の町内会長が、テナントが空いた自宅の1階を保育園のためならと貸してくれることになった。
———町内会長との出逢いも、古小烏公園で毎月開かれている地域のラジオ体操に参加したことでした。保育園は補助金事業で、予算はかぎられています。テナントの賃料は予算を超えていましたが、地域のためにもなるだろうからと、払える金額まで下げてくれたんです。そのときは、立ち上げの準備段階で、公募に採用されるかもわからないのに1年間もテナントを空けて無償で待ってくれました。まちに場をひらいてきたことで、近隣の方々とのつながりが生まれ、2園目も立ち上げることができたんです。
この保育園をつくる過程では、園ができあがるまでの一部始終を子どもたちとともにできた。子どもと、大人と、地域がともにつくる保育園が、こうして新たにできあがった。