アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#44
2016.10

本、言葉、アーカイヴ

前編 仙台・石巻 これからを「本」でひらく
10) 隔てをなくして、同じ円のなかに存在する
一般社団法人Granny  Rideto 桃生和成さん 3

「ひとを育てる」ことを考えるとき、桃生さんが意識しているのは「隔てをなくす」ことである。書き手と読み手、つくり手と受け手。あるいは建築家と居住者。その間に線を引かず、敷居を下げて、自由に行き来できる社会をイメージしているのだ。

———「隔てないこと」は、わたしの基本スタンスなんですね。うまく混ぜ合わせることを大事にしたいなと。岩手にいたこともあって、宮沢賢治がけっこう好きで身近な存在なんですが、賢治が言っていたのは「職業芸術家はいらない。誰もが芸術家である」ということです。わたしは芸術は特別なのではなくて、誰もが表現ができて、参加するようなことだと解釈していて。そういうふうにできたらと思います。対立ではなく、同じ円のなかに存在するようにしていく。

本とは少し離れるが、桃生さんが現在手がけているまちづくりの仕事にも、「隔てない」姿勢がよくあらわれている。宮城県内の利府町につくる公共施設だが、利用者となる人々を巻き込んで、どんな施設にしたらいいかを、ゼロからともに考えている。町の住民もそうでなくても使える、起業や創業するひとの支援のための施設だから、新しいことに挑戦したいひとにとっては、大切な場所となる。今のところ月2回ほど、建物の仕様からロゴに至るまで、ハードとソフト両面について意見を出し合っているという。

利府町の公共施設の完成模型。利用人数40名ほどを予定している

利府町の公共施設の完成模型。利用予定人数は40名ほど

その一方で、ユーモラスで楽しい取り組みも続けている。そこでも隔てをなくし、ひとを育てるべく、真剣に遊んでいるのだ。

———「つれづれ団」といって、東北の人材をつなぐような取り組みです。400人ぐらい団員がいるんですけど、仕事の依頼がきたら手をあげたひとで毎回チームをつくってプロジェクトをやって、終わったら解散して、また次の仕事がきたら興味のあるひとが手をあげて、という感じです。みんな職種もばらばらで、建築家やデザイナーもいれば、学校の先生も、市や県の公務員もいます。敷居を下げて、いろんなひとが入れるようにしてますね。

ちなみに冒険図書館プロジェクトも、実はつれづれ団の活動のひとつとして始めたものだし、THE6の本棚にあったフリーペーパー『Hibi(ひび)』もつれづれ団のチーム「日本ケース割れ同好会」の作だ。もはやあまり流通しなくなってしまったCDの手ざわりを思い出そうと、CDのブックレットサイズで、音楽のエピソードを書いたりレビューをする、掲示板をつくるなど自由に楽しんでいる。

———つくっているみんな素人ですが、携わったひとが自分だったら何をつくろう、独自でもつくろうと続いていったらいいと思っていて。
わたしができることは、やりたいひとの背中を押すこと。その押し具合はひとによって違って、このひとできるっていうひとはがっと押すし、ゆっくりのひとはそっと押す。それだけですね。

何か機会さえあれば、ものをつくったりかたちにすることは、多くのひとにとって、実はそう難しいことではない。ただ問題は、その機会に恵まれるかどうか、そしてその後も続けていけるかということだ。桃生さんはこれまでの経験もあって、そのことがよくわかっている。だからこそ、その役割を買って出るのだと思う。

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つれづれ団の団員たちとその活動。フレキシブルに、その時々でやれることをやり、「自分で何かできるひと」になってゆく(写真:つれづれ団)