アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#44
2016.10

本、言葉、アーカイヴ

前編 これからを「本」でひらく 宮城・仙台、石巻
9)本をつくって伝える、ひとを育てる
一般社団法人Granny  Rideto 桃生和成さん2

桃生さんは、市民活動家として知られた加藤哲夫さんのもとで働いてきた(ちなみに「book cafe 火星の庭」の前野久美子さんもそうで、桃生さんの先輩にあたる)。そこで学んだ市民活動やNPOのまちづくりなどが桃生さんの原点となっている。その視点を活かしつつ、伝えるべきことを伝えるために本を出す予定だ。

———本だけでは経済的にはやっていけないので、他のことをやって、出版事業自体が赤字になっても本を出すべきひとの著書を出す。東日本大震災の後で、東京からとか、いろんな支援をしていただいた方が本を出して、その考え方がブレイクして取り組みが全国に広まったりしていますが、東北に住んでいて震災に遭って、そこからずっとやってきたひとたちがあんまり本を書いてない気が個人的にはしていて。そういうひとたちの思いを書籍で伝えることを、これからしていきたいですね。
今は出版のかたちが自由になっていますし、コストを抑えた出し方はいろいろあると思うので、まずは少部数から始めて、徐々に部数を増やしていきたい。宮城のオリジナルレーベルみたいなかたちで、本を出していくことがここ1、2年の目標です。

「まちライブラリー」的な小さな本棚と「冒険図書館プロジェクト」、そして「宮城のオリジナルレーベル」を設立して本を出すこと。それらすべてを関連づけたい、という桃生さんの目指すところは何だろうか。

———たぶん、人材育成なんです。震災以降、東北では社会的なものとか、地域に目を向けるひとが増えています。そういったひとたちも能力やポテンシャルはあるけど、何を、どうかたちにするかというところが非常に弱い。それに、地理的に東京と仙台は近いので、人材が流出しやすいんですよね。国公立の大学生が卒業後はどんどん東京に出ていく。地元に残りたいひとも割合としては増えているんですけど、そのひとたちが活躍できる場をどうつくるか、あるいは自分たちがどうつくれるのか。そういう意味で、宮城や東北でがんばっているひとを、きちんと見せることも大切だと思うんです。