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アネモメトリ -風の手帖-

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#253

札幌のシメパフェ文化
― 北海道札幌市

お酒を楽しんだ後のシメといえば、ラーメンや雑炊などが定番かもしれませんが、札幌市ではシメとしてパフェを食する、その名も「シメパフェ」が人気です。市内には多くのシメパフェ専門店があり、年代性別を問わず夜な夜な人々が集い、パフェを味わっています。もともと北海道は暖房が充実しており、ほてった体をクールダウンさせるため、冬場でもアイスクリームを食するのが一般的でした。そうした傾向に着目した市内のパフェ提供店が2015年に「札幌パフェ推進委員会」を発足し、シメパフェブームの火付け役となりました。2024年3月現在、推進委員会には19店舗が加盟しています。

地下鉄すすきの駅にほど近い「カフェノイモンド」の『野菜パフェ』。紫芋とかぼちゃのアイス、ミニトマトのコンポートなどで構成されたヘルシーなパフェ。道産生乳100パーセントのアイスが美味しいお店です

地下鉄すすきの駅にほど近い「カフェノイモンド」の『野菜パフェ』。紫芋とかぼちゃのアイス、ミニトマトのコンポートなどで構成されたヘルシーなパフェ。道産生乳100パーセントのアイスが美味しいお店です

さてシメパフェの特徴をいくつか挙げると、1つには農業や酪農が盛んな北海道ならではの新鮮な果物や乳製品がふんだんに使われている点があります。地産地消の観点でも意義がありますが、とりわけ昨今深刻な経営難に直面する酪農業への一助になりうるのかもしれません。

狸小路商店街にある「イニシャル」の『パルフェ・オランジュ』。こちらのお店はハーブやスパイス組み合わせた風味豊かなパフェが特徴で、『パルフェ・オランジュ』ではエルダーフラワーやシナモンが用いられています

狸小路商店街にある「イニシャル」の『パルフェ・オランジュ』。こちらのお店はハーブやスパイスを組み合わせた風味豊かなパフェが特徴で、『パルフェ・オランジュ』ではエルダーフラワーやシナモンが用いられています

2つ目には、パフェ自体の非常に手の込んだ複雑な構成が挙げられるでしょう。お店によっては10種類以上のパーツを組み立てたパフェを提供しており、見た目の美しさも秀逸です。ひと口含めば、さまざまな食感、香り、温度を判別しようとして、味覚が鍛えられるような感覚になりつつも、はかなく渾然一体となり消えてしまいます。しかしそうした一種のいじらしさすらも、シメパフェの魅力なのではと筆者はふと思いました。

市電資生館小学校前に近い、「ななかま堂」の『寒椿』。15種類ものパーツで構成されています。こちらは和の素材にこだわっており、抹茶や小豆、白胡麻などが使われています。椿の花びらの部分は木苺ラングドシャです

市電資生館小学校前に近い、「ななかま堂」の『寒椿』。15種類ものパーツで構成されています。こちらは和の素材にこだわっており、抹茶や小豆、白胡麻などが使われています。椿の花びらの部分は木苺ラングドシャです

3つ目には、これは和菓子やケーキも同様ですが、季節感の表現があります。春は桜や苺、夏はミントやトロピカルフルーツ、秋は芋やかぼちゃ、冬は梅や柚子といった季節ごとの旬の素材を用いた期間限定パフェを考案しているお店が多く、それも楽しみのひとつです。
シメパフェはお酒の後ということが配慮されて、比較的甘さが控えめでくどくなく、さっぱりといただくことができます。お昼から営業しているお店もあり、もちろんお酒を飲まないかたも十分に楽しめます。札幌にお越しの際は、店舗ごとに趣向を凝らしたパフェをお試しになられてみてはいかがでしょうか。

参考
札幌シメパフェ
https://sapporo-parfait.com

PREZO「シメパフェ(夜パフェ)文化はなぜ札幌に根付いたのか。ルーツと人気店を紹介!」、https://prezo.jp/column/5518(2024年3月15日閲覧)。

「クックパッドニュース:飲んだ後のシメに食べる!?「パフェ」が大人の間でブームな理由[あの食トレンドを深掘り!Vol.10]」『毎日新聞デジタル』、2020年10月4日、
https://mainichi.jp/articles/20201004/ckp/00m/100/007000c(2024年3月17日閲覧)。

(加藤綾)