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アネモメトリ -風の手帖-

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#156

本屋さんが書く新聞
― 富山県富山市

本という商品はどこででも手に入れることができる世の中になりましたが、本好きの方には必ず贔屓の本屋さんがあるのではないでしょうか。
富山県の創業明治16年の老舗チェーン書店BOOKSなかだ(中田図書販売株式会社)が発行する「中田図書新聞」は、2006年8月に第1号を、その後、年2~4号の発行を重ね、最新は第61号になります。書評でもなく感想文でもない、書いている店員さんの「この本が好き! ぜひ読んでみて!」という意気込みがそのまんま伝わってくる、個性溢れる本の紹介文が、紙面4枚を埋め尽くしています。この新聞、一体どのようにしてできるのでしょうか。BOOKSなかだ掛尾本店主任店長の斉藤さんにお話を伺いました。
「話題や構成は執筆者に任せてあります。好きなもの、おススメしたいもの、得意なものを、自分で決めて書いてみようと、社員から記事を募集しています」と、斉藤さん。
店員のみなさんにはそれぞれ担当分野があるそうですが、必ずしもそれが得意分野ではないそうです。実は、得意分野を担当すると行き詰まりやすく、自身で担当になった分野を開拓することが大切なのだとか。担当しているうちにその分野にのめりこんでいく店員さんがほとんどなのだそうです。斉藤さんいわく、「店員みんなが個性的」。その個性的な店員さんたちが分野開拓して書く記事は、時々、愛が溢れすぎていて少し直してもらうこともあるくらい、力がこもっています。
新聞創刊の目的は、店員さんそれぞれのファンを獲得すること。文章に比べてかなり控えめに記された店員さんサイン、それはファン獲得のための策なのかと勘ぐってしまう私ですが、実のところ、本を手にとってもらえれば満足という本望の現われのようです。
店内には「中田図書新聞掲載商品コーナー」が設置されています。何を読もうか迷ったとき、ここに行くと面白い本が見つかるかもしれない、と思える本屋さんがあることは、頼もしいかぎりです。

(加藤明子)

BOOKSなかだ掛尾本店「中田図書新聞」コーナー前、新聞の編集を手がける主任店長の斉藤さん

BOOKSなかだ掛尾本店「中田図書新聞」コーナー前、新聞の編集を手がける主任店長の斉藤さん

中田図書新聞。初期は驚きの手書き。現在は、新聞らしく、店員さん作の4コマ漫画がついています

中田図書新聞。初期は驚きの手書き。現在は、新聞らしく、店員さん作の4コマ漫画がついています

頼りになる町の本屋さん、BOOKSなかだ掛尾本店

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