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アネモメトリ -風の手帖-

風信帖 各地の出来事から出版レビュー

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#117

外国人技能実習生の母(仮) 
― 静岡県掛川市

ケーキの上にチョコで書かれた漢字のフルネーム、娘たちからの誕生日サプライズです。私は彼女たちの生活指導員で「娘」とはインドネシアから来た技能実習生のことです。
静岡県は、2018年時点で、人口における外国人の割合が全国8位だそうです(1)。
私の暮らす静岡県西部は昔から外国人が多い地域ですが、最近は定住する人も増えています。観光客だけでなく、こうした定住者や一時的な居住者は地域の貴重な消費者です。
日本で働く外国人の就労ビザは、その条件によって数十種類あります。外国人技能実習生は、まず3年の滞在を目標に入国して、本人の希望と高校の履修科目に関係した職場に振り分けられます(2)。水産とパン製造を学んだ彼女たちは、卒業後に仲介業者の研修を受講し入国後も日本家屋で生活習慣の研修を受けてから、私の町のスーパーマーケットに配属されました。
東京五輪直前のころに彼女たちは帰国の日を迎えます。一定の試験に合格していったん1か月以上帰国すれば、最長5年まで延長は可能です。恵まれた環境で稼げる幸運と望郷の想いのあいだで、娘たちの心は揺れています。「彼女たちがもたらしたものは労働力だけではありません」と語る雇用主は、実習生に日本人社員とほぼ同額の経費をかけています。彼女たちの存在が社内の雰囲気を向上させたのは予想以上の成果であり、いま彼女たちを手放すことは企業側にとっても悩ましい決断のようです。
「仕事が楽しい」と、職場の出来事を嬉しそうに話す娘たち。母国のご家族も、スマートフォン越しに毎日その話を聞いています。会社の皆さんと彼女たちの関係性は、互いの違いを受け入れ合う暮らしかたのお手本です。そしてこれは職場に限定されることではないと思います。あなたの地域に暮らす外国人のかたへ、まずはあいさつしてみませんか。最初は勇気がいることかもしれませんが続けるうちにきっと、航空券が無くてもいろいろな国と触れ合える、新しい旅が始まるかもしれません。
と書き終えたところに、娘たちから「2人のよていは5年のばします」のメッセージが来ました。お祝いに試験問題をたっぷりプレゼントしようと思う母(仮)でした。

(住田祥子)

(1)
法務省 在留外国人統計
http://www.moj.go.jp/content/001269620.pdf

(2)
所属する仲介業者によって就労対応は異なる場合があります。

参考
静岡県 在留外国人統計/外国人登録国籍別市町村別人員調査
https://toukei.pref.shizuoka.jp/chosa/02-060/index.html

新たな外国人技能実習制度について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000204970_1.pdf

外務省 インドネシア共和国 基礎データ
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/data.html#top

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