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アネモメトリ -風の手帖-

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沖縄における遊行芸の今日
― 沖縄県沖縄市

新年に家の予祝を謡う萬歳や養蚕の予祝を謡う春駒など、遊行芸人によって行われる芸能は沖縄にもありました。
沖縄における遊行芸人の起源は定かではありませんが、京都からやってきたという伝承から彼らは「チョンダラー(京太郎)」と呼ばれていました。
祝儀だけではなく、葬儀に際しては鉦鼓(しょうこ)を打ち葬列に加わり念仏歌を唱えたりしました。
明治になると、那覇や首里に誕生した劇場で、舞台芸としてチョンダラーの芸能を役者が演じるようになりました。沖縄戦後、チョンダラーという職業芸人はいなくなりましたが、劇場の役者たちによって各地に伝えられた地域芸能として、また琉球舞踊や組踊に組み入れられた形で、彼らの芸を今日でも目にすることが出来ます。旅芸人に扮した兄弟が父親の敵を討つ組踊「万歳敵討」、「万歳敵討」の一部を琉球舞踊にした「高平良万歳(タカデーラマンザイ)」、名護市や読谷村に伝わる地域芸能などが代表的なものです。また、沖縄のお盆に踊られる「エイサー」もチョンダラーの念仏踊りが各地に伝播したものと言われています。
沖縄県沖縄市の芸能にチョンダラーがどのように登場するかご紹介します。
ひとつは沖縄県指定無形文化財であり国の選択無形文化財「泡瀬の京太郎」です。首里の劇場の俳優が泡瀬地区に伝え、明治39年に地区の祝いの場で初演されました。国家安寧、豊作、養蚕の出来を予祝する遊行芸人チョンダラーの芸を今に伝えるものです(1)。「泡瀬京太郎保存会」の喜屋武会長にお会いし活動の様子をお聞きしところ、毎週水曜日に練習を行い、県内外で普及公演を行っているそうです。
もうひとつ、エイサーの演舞で場を盛り上げ、舞手と観客の一体感を醸成し、全体に目を配る役割の者、彼らもチョンダラーと呼ばれています。
沖縄市の植物園で行われたエイサーのイベントでチョンダラーを取材してきました。

沖縄市池原青年会のエイサー演舞 

映像隊列中央でメイクをほどこし踊っているのがチョンダラーです。メイクや装いは団体により違いがあります(2)。
このように2つの異なった形態のチョンダラーを沖縄市の芸能の中に見ることができます。また、チョンダラーの芸能は沖縄市以外の地域にも伝承しており、沖縄市以外のエイサーにおいてもチョンダラー役は登場します。

(儀間真勝)

(1)
「泡瀬の京太郎」紹介パンフレットより。

(2)

沖縄市のエイサーに登場するチョンダラー 上段:越来青年会のチョンダラー 下段:池原青年会のチョンダラー

沖縄市のエイサーに登場するチョンダラー
上段:越来青年会のチョンダラー
下段:池原青年会のチョンダラー

「泡瀬の京太郎」演目紹介(泡瀬京太郎保存会パンフレットより)

「泡瀬の京太郎」演目紹介(泡瀬京太郎保存会パンフレットより)