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アネモメトリ -風の手帖-

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#319

A館B館
― 東京都渋谷区

渋谷西武(西武渋谷店)と聞いて最初に浮かぶのは、「A館B館」でしょうか。
渋谷西武は2026年9月末で営業を終了します。渋谷ハンズ閉店の発表もあり、時代の変化を嫌でも意識せざるを得ません。
池袋が本拠地である西武百貨店初の大型支店として、渋谷西武は1968年に開店しました。東急のお膝元・渋谷への進出にあたり、イメージ戦略と文化発信に力を注いだことで、セゾン文化を育んだ店ともいえるでしょう。
ところで、渋谷西武の敷地には井の頭通りが貫通しており、開店当初から2館に分かれての運営を強いられたのです。そのため、空中連絡通路で双方を結び、一体化した店舗空間の形成に努めました。未来的なガラス張りの通路は広告にも使われ、人々に「そこを歩いてみたい」と思わせる力を持つものでした。

渋谷西武。A館(左)とB館(右)

渋谷西武。A館(左)とB館(右)

空中連絡通路

空中連絡通路

2つの館の渋谷駅側がA館、北側はB館と名付けられました。オーソドックスな「南館・北館」としなかったところに、当時の西武らしさを垣間見せています。この呼称は後に有楽町西武や札幌西武などでも採用され、他の百貨店にも広がりました。今でも商業施設の「A館B館」という呼び方に、東京らしい都会的な雰囲気を重ねてしまいます。

A館入口のドア

A館入口のドア

その後、渋谷西武は別館としてシード館(現モヴィーダ館)とロフト館を出店しました。渋谷の大型商業施設では、巨艦化よりも近隣に独立した館を増殖させる展開がよく見られます。パート1〜3に分かれていた旧渋谷パルコや、至近距離に東横店と本店があった東急百貨店、そして様々な新業態の館に挑戦した丸井、まさに館の百花繚乱でした。

渋谷駅の再開発

渋谷駅前の再開発

2010年代からは、東急グループによって渋谷駅前の再開発が継続しています。渋谷ヒカリエをはじめ超高層ビルが続々と林立する姿は、圧倒的に規模が巨大であるにもかかわらず、どこか渋谷らしい“館”スタイルを受け継いでいるかのようです。
あらためて渋谷西武のA館とB館を眺めてみると、半世紀以上の時を経てもなお、変わらぬ調和を保っていました。

参考
由井常彦編『セゾンの歴史 : 変革のダイナミズム 上巻』リブロポート、1991年。

(三木京志)