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アネモメトリ -風の手帖-

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#19

GALLERY ガラスのピラミッド
― 富山県射水市

富山県射水市東太閤山の住宅街に、青々とした植物に囲まれたガラス張りの建物があります。ピラミッド型のこの建物は、オーナーである建築家の水野行偉さんが設計し、世界遺産である五箇山の合掌造りから着想を得て作られたものです。合掌造りの屋根は、雪が自然と下に落ちるように急勾配につくられていますが、それに倣ってこの建物も設計されていて、雪深い北陸ならではの構造となっています。また内部には、水野さん自身の建築設計事務所があり、奥様でもある陶芸家のたこあつこさんの工房も併設されています。
このギャラリーでは2005年から現在に至るまで県内の作家を中心に、日本画・造形・ガラス・陶器・その他クラフト作家等の展覧会を数多く開催してきました。また、アーティストによる音楽イベントも開催し、作家を始め様々な年代の人々が自然と集まり交流する場所となりました。
ギャラリー、建築設計事務所、陶芸工房、そして住居スペースとして4つの顔を持つこの場所が人々を引き付ける魅力はどこにあるのでしょうか。
奥様は「職業柄、外へ出かけていく機会が少なかったからこそ、この場所を開放して沢山の人たちと交流できることが嬉しい。夫の建築家としての仕事や自身の陶芸の仕事をいつでも見てもらえる状態であることが良い」と話します。
ギャラリーには展示会中でなくとも自然と作品が配置されています。
多くの人は作品を見るとき、歌を聴くとき、それぞれのいる場所から一歩踏み出して、少なからず見えない敷居をまたいでその場所へたどり着くのではないでしょうか。水野さんは「この場所に敷居はないです」といいます。仰々しく出向くのではなく、自然と日常生活の中に作品があること、音楽があること、偶然出会った人達の間に会話が生まれること、与える側と受け取る側がフラットな関係であることを感じられる良さがこのギャラリーにはあります。
その土地の特徴を取り入れた建物の中で、自然の流れに沿って楽しみながら日々を過ごす姿勢が、多くの人々を引き付けている魅力なのでしょう。

参考
GALLERYガラスのピラミッド
水野行偉建築設計事務所 
たこあつこ 陶芸工房
水野行偉さん、たこあつこさんのお話(2016.9.15)

(北島真理子)
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