アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

風信帖 各地の出来事から出版レビュー

TOP >>  風信帖
このページをシェア Twitter facebook
#275

中国寧波の藺草編み
― 中華人民共和国 浙江省 寧波市

中国浙江(せっこう)省寧波(ねいは)の藺草(いぐさ)編みは、7000年前の河姆渡(かぼと)文化にまで遡る長い歴史を持つ伝統工芸です。寧波で出土した藺草編みの遺物から、この地域の先祖は当時すでに藺草編みの技術に精通しており、日常生活に取り入れていたことが分かっています。中国では隋・唐の時代から、寧波の藺草編み製品は海上シルクロードの重要な商品となり、特に藺草編みのマットや帽子は有名でした。多くの王朝を経て発展したこの工芸は、独自のスタイルを形成し、幅広い市場を獲得しました。

9dcd07cdbdcdc158016d7df662b99d53

647cf697c52a34fee6005f815d03922c

藺草を主な原材料とする寧波の藺草編みの発展は、この地域の湿地環境によるところが大きいです。この地域の藺草の種は耐久性柔軟性があるため、マットや帽子の編み込みに理想的な素材です。早くも隋・唐の時代には、寧波の藺草マットは「越席(ュエシー)」の名で中国全土で取引され、人気商品となっていました。そして国内で人気を博しただけでなく、東南アジアや日本などにも輸出されていました。
そのような歴史をもつ寧波の藺草編みですが、近年は機械の普及により、伝統的な手作りの藺草編みは失われる危機に瀕しています。寧波の藺草編みの盛衰は、近代化の過程における中国の手工芸の課題、その機会の損失を映し出しています、寧波には藺草編みの技術を継承する人々や拠点数多く残っています。例えば、古林県の藺草編み技術は、浙江省の無形文化遺産に登録されています。地元の継承者たちは伝統を継承しながら技術革新を行い、この技術を伝承してきました。

2ccd0129b18c79a0767d00c7cc0734f3

近年、レトロなファッションの流行により、藺草編み製品はファッション業界で再び人気を集めています。寧波の藺草編み製品は、徐々に実用品からファッションアイテムへと変化し、衣類や家庭用品などの分野で使用されるようになりました。藺草編み製品は環境に優しく、天然で持続可能な特性を備えており、現代社会において大きな発展の可能性を秘めています。藺草編み製品は、その深い歴史、独特な美的特性、実用性により、寧波の無形文化遺産の重要な一部となり、現代社会における伝統工芸の復興という新たな方向性を示すものとなりました。

(史 雲河・林 心韜)