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アネモメトリ -風の手帖-

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#192

積み上げられた「廃材」が魅せる街
― 愛知県常滑市

常滑と言えば、今では、朱泥と呼ばれる赤い急須の産地として知られています。この街は平安時代からの歴史をもつ古い焼き物の街です。
その常滑を有名にしたのは、明治から昭和にかけて、下水道整備、鉄道建設など、近代日本の都市のインフラ整備に欠かせない土管造りでした。
今回は、近代日本の主役となれなかった土管の「廃材」が通りのあちこちに積み上げられ、街の景観に溶け込んでいる様子を紹介しましょう。
常滑は海岸から丘陵への坂道に沿って、窯場が連なるように街が発展してきました。そして、その坂に沿って、地中に埋められる土管や熟成を待つ焼酎を貯蔵する瓶たちが、坂の土留めや工場を囲う垣根、擁壁として積まれ、焼き物の街らしい景観となっています。その多くは、規格外で商品とならなかった廃材や売れ残りが再利用され、無造作に積み上げられているのです。
この大らかな景観造形がデジタル社会へのアンチテーゼとして、今、見直されているのではないかと思うのです。

それでは、代表的な廃材たちの表情を紹介しましょう。

お墓の土留め

1 丘陵地の墓地の土留めとして積まれた土管
丘陵地の墓地には約600本の土管が積まれています。土管が墓地の傾斜に沿って連続的に積み上げられ、波打つように見える壁面は豪快です。晴れた日には、カーブを描く土管の表面に乱反射する光が印象的です。

焼酎瓶の土留め

2 堂々と積み上げられた焼酎瓶
注ぎ口を正面に、横倒しにされた400個以上の焼酎瓶が土留めの壁面に整然と積まれています。この圧倒するような大壁面の存在感に驚かされます。

土管坂

3 焼き物の副資材で飾られた舗道
通称、土管坂と呼ばれる坂道で、「ケサワ」と呼ばれる土管を焼く時に使われたリング状の焼き台が坂道の滑り止めとして利用されています。この街で「廃材」がデザインされている唯一の例じゃないでしょうか。この坂の両側にも土管や焼酎瓶が積まれています。

常滑駅の近くには、「やきもの散歩道」も整備されています。街並みや買い物を楽しみながら歩ける約2kmのコースです。立春も過ぎました。日差しが柔らかくなったら、一度、この「廃材」が作り出す造形美の街を散策してみてください。

参考
とこなめ陶の森
https://www.tokoname-tounomori.jp/

常滑やきもの散歩道 とこなめ観光協会
https://www.tokoname-kankou.net/contents/miru02-01.html

常滑市観光プラザ とこなめ観光協会
https://www.tokoname-kankou.net/contents/miru01-14.html

(若尾憲治 )